最近、歴史・時代小説を取り上げることが多く、気になっている月刊文芸誌、『オール讀物2020年12月号』(文藝春秋)を入手しました。
特集は、第10回本屋が選ぶ時代小説大賞発表決定 。
永井紗耶子さんの『商う狼 江戸商人杉本茂十郎』が、大賞に決定するまでの選考会の詳細を掲載しています。
永井さんが作品の舞台となった、永代橋をバックにしたショットも素敵です。
今回、どうしても読みたかったのが、「気鋭作家たちの大座談会 歴史小説はこんなに面白い!」。
天野純希さん、今村翔吾さん、川越宗一さん、木下昌輝さん、澤田瞳子さん、武川佑さん、谷津矢車さんという、旬で活躍中で同世代の歴史作家たちが集結して、歴史小説の魅力を語ってくれます。
作家を志したきっかけからお話をされ、「初心者にお勧めする短篇歴史小説」「ビジネスに役立ちそうな歴史小説」「自身が偏愛してきた歴史小説」の三作を披露しています。
文芸評論家や書評家とは違う同業者としての視点から、自作とおすすめ作品との距離感や影響など、面白かった。目からウロコです。
短篇と長篇の違い、歴史小説を書くことに影響を与えたものから今後書きたい題材まで、話はぐんぐん広がっていきます。
谷津矢車さんの歴史群像大賞優秀賞を受賞した作品が「蒲生の記」で書籍化されていないという話を興味深く読みました。
私もタイトルから、戦国大名の蒲生氏郷を主人公にした小説と思い込んでいました。実は江戸の儒学者・蒲生君平を描いたもので、誰も知らない人物ということで出版化が見合されたようです。
そう聞くと、どんな作品だったのか、急に気になりだしました。
七人の作家のお話を聞いて、妄想が広がり、今後執筆される歴史時代小説がますます楽しみになりました。
特集に連動した、「本屋が選ぶ時代小説大賞」歴代受賞作家の短篇に加えて、畠中恵さんや大島真寿美さん、村木嵐さんらの読み切りの時代小説もあって、1カ月まるまる楽しめる読み応え十分な12月号です。
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『オール讀物2020年12月号』(文藝春秋)
『商う狼 江戸商人杉本茂十郎』(永井紗耶子・新潮社)