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長屋の人情、親子の情、質屋の女番頭の情けが胸に沁みる

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『ごんげん長屋つれづれ帖(一) かみなりお勝』|金子成人|双葉文庫

ごんげん長屋つれづれ帖(一) かみなりお勝金子成人(かねこなりと)さんの文庫書き下ろし時代小説、『ごんげん長屋つれづれ帖(一) かみなりお勝』(双葉文庫)を入手しました。

時代劇「鬼平犯科帳」や「剣客商売」などの脚本を手掛けてきた名脚本家の著者の新しい時代小説シリーズの主人公は、38歳の大年増で三人の子持ちの寡婦。

「付添い屋・六平太」や「若旦那道中双六」など、これまで男性を主人公にした時代小説シリーズを発表してきた著者が、女性を主人公に据えて描く人情長屋ものです。

岡場所で賑わう根津権現門前町の裏店、通称『ごんげん長屋』に住まうお勝は、女だてらに質屋の番頭を務め、女手ひとつで三人の子供を育てる大年増。情に厚くて世話焼きなお勝は『かみなりお勝』とあだ名され、周囲に一目置かれる存在だ。そんなお勝の周りでは、今日も騒動が巻き起こり――。くすりと笑えてほろりと泣ける、これぞ人情物の決定版。時代劇の超大物脚本家が贈る、傑作シリーズ第一弾!
(カバー裏の内容紹介より)

お勝は、根津権現門前町にある『ごんげん長屋』の九尺三間の部屋に、十二歳のお琴、十歳の幸助、七歳のお妙の三人の子供たちと暮らしています。
三人の子を養って生計を立てるために、根津権現社に近くの質舗『岩木屋』に番頭としてつとめています。

お勝は、馬喰町の旅人宿で生まれましたが、二十年前の寛政十年(1798)に近隣から出た火によって消失し、二親と三つ違いの兄太吉を焼死で失いました。

そのとき十八だったお勝は、当時奉公に上がっていた大身の旗本家におり、家族に降りかかった災禍を知ったのは、火事の翌日でした。

「そうそう。お勝ってお人は、餓鬼の時分から小太刀をものにして、近所の年上の悪餓鬼からも恐れられてたと言ったら、作造親分、なるほど、だってよ」
「何が、なるほどだよぉ」
 お勝が口を尖らせる。
「根津のほうじゃ、かみなりお勝って呼ばれてるらしいじゃないか」
「そりゃお前の聞き間違いだよぉ」
 
(『ごんげん長屋つれづれ帖(一) かみなりお勝』「第一話 かみなりお勝」P.23より)

お勝は、二親と兄の命日に、墓がある深川の要津寺にお参りに行った帰り、馬喰町に立ち寄り、幼馴染みで目明しの銀平に会いました。
銀平は、同業の作造親分から、お勝が「かみなりお勝」と呼ばれ、地元の質屋の女番頭としてよく知られる存在だと教えられました。

お勝は、口やかましく、間違ったことにはかみなりを落とすこともありますが、質屋で損料貸しも兼ねる『岩木屋』を切り盛りする、やり手の番頭です。
そして、『ごんげん長屋』の住人たちにとっても、温かく頼りになる存在。

江戸情緒あふれる根津権現社界隈を舞台に、長屋の住人たちや質屋をめぐる人々と織りなしていく人情物語、時代ホームドラマです。

ごんげん長屋つれづれ帖(一) かみなりお勝

金子成人
双葉社 双葉文庫
2020年10月18日第1刷発行
文庫書き下ろし

カバーデザイン:寒水久美子
カバーイラストレーション:瀬知エリカ

●目次
第一話 かみなりお勝
第二話 隠し金始末
第三話 むくどり
第四話 子は宝

本文277ページ

■Amazon.co.jp
『ごんげん長屋つれづれ帖(一) かみなりお勝』(金子成人・双葉文庫)
『付添い屋・六平太 龍の巻 留め女』(金子成人・小学館文庫)
『若旦那道中双六(一) てやんでぇ!』(金子成人・双葉文庫)

金子成人|時代小説ガイド
金子成人|かねこなりと|時代小説・作家 1949年、長崎県生まれ。脚本家。 1997年、第16回向田邦子賞を受賞。 2014年、『付添い屋・六平太 龍の巻 留め女』で、時代小説デビュー。 ■時代小説SHOW 投稿記事 八丈島から島抜け。兄を...