『刑事特捜隊「お客さま」相談係 伊達政鷹』
鳴神響一(なるかみきょういち)さんの文庫書き下ろし現代ミステリー、『刑事特捜隊「お客さま」相談係 伊達政鷹』(小学館文庫)をご恵贈いただきました。
『脳科学捜査官 真田夏希』(角川文庫)、『令嬢弁護士桜子』(幻冬舎文庫)と、文庫書き下ろしの現代ミステリー・シリーズで人気上昇中の、著者の新しい警察小説シリーズです。
主人公は、前職が神奈川県警刑事部捜査一課第七係の伊達政鷹(だてまさたか)。
花形エリート部署から、「刑事特別捜査隊第四班に不名誉の異動により、政鷹がやってくるところから物語は始まります。
第四班は、本部建物から離れた場所に建つ老朽化したビル内にあり、「あっちの特四」と掃き溜め扱いされていました。
苦情申立人の話を聞いて、捜査が必要だと判断した事案は、独自に捜査をするという班でしたが、実際は事件性がないとして最初から県警が取り上げなかった事件だけしか扱えません。そのため、「県警お客さま相談係」とも呼ばれるクレーマー対策の部署でした。
政鷹は、班長に着任の挨拶もしないうちに、訳も分からないまま、苦情申立人の苦情を聞く羽目になりました。
二宮町からやってきた神保長治と名乗る六十歳ぐらいの男性は、娘の眞美が自殺なんてするはずがないと激高し、警察は無能でバカな奴ばっかりと叫びました。
政鷹は、娘を失い、ひとり残された父親である神保の不幸な気持ちに寄り添うことが自分に求められていると考えて、正確な状況を把握するために、できる限り神保に心を開かせて、真実を導き出そうと考えて詳しい話を聞きました。
「あんた、なんて名前だ?」
神保は思いついたように尋ねてきた。
「伊達と申します」
「ほう、独眼竜政宗の子孫か」
神保は感心した声を出した。
「いえ……遠い祖先は一緒ですが、政宗の子孫ではありません」
政鷹は、政宗の仙台伊達本家から江戸初期に枝分かれした仙台藩一門である亘理伊達家の血を引いている。亘理伊達家は一門としては最大で、江戸時代には二万石以上を領していた。最後の殿さまは北海道伊達市を拓いた伊達邦成である。(『刑事特捜隊「お客さま」相談係 伊達政鷹』P.24より)
八カ月前の四月に、神保の三十歳になる娘眞美は、箱根の芦ノ湖の湖尻水門あたりで水死体で発見されました。泊まっていたペンションの部屋に睡眠改善剤の空き箱と、遺書のようなメッセージが残されていたことから、警察は早々に自殺と判断しました。
神保の話を聞いて、政鷹は気がかりな点を見つけて、もっと詳しく調べるべきと思い、
第四班班長の安東ゆかりの許可が下りて、亜澄と捜査を始めました。
政鷹は、自殺が濃厚な事案の真相を明らかにすることができるのでしょうか?
元エリート刑事の政鷹ですが、北海道大沼公園出身で、フラメンコギターが半プロ級の腕前という設定です。
著者自身も大のフラメンコファンで、フラメンコが主題となっている『エスパーニャのサムライ 天の女王』という西洋時代ミステリーもあります。
本書でもフラメンコが、物語に音と情感をもたらし、重要なアクセントとなっています。
刑事特捜隊「お客さま」相談係 伊達政鷹
鳴神響一
小学館 小学館文庫
2020年11月11日初版第一刷発行
文庫書き下ろし
カバーフォト:PIXTA
カバーデザイン:鈴木俊文(ムシカゴグラフィクス)
●目次
第一章 あっちの特四
第二章 湖尻のさざなみ
第三章 新たな疑惑
第四章 湖畔の輝ける太陽
第五章 こころやさしき人
本文438ページ
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『刑事特捜隊「お客さま」相談係 伊達政鷹』(鳴神響一・小学館文庫)
『脳科学捜査官 真田夏希』(鳴神響一・角川文庫)
『令嬢弁護士桜子 チェリー・ラプソディー』(鳴神響一・幻冬舎文庫)
『エスパーニャのサムライ 天の女王』(鳴神響一・双葉文庫)