『牛天神 損料屋喜八郎始末控え』
山本一力さんの時代小説、『牛天神 損料屋喜八郎始末控え』(文春文庫)を入手しました。
同心の職を辞して、刀を捨てて町人となり損料屋を始めた喜八郎。
損料屋は、鍋、布団などの日用品や衣装を貸し、料金を受け取るレンタルショップです。
喜八郎の損料屋には本業のほかに、江戸深川の町人たちを守るため、別の仕事を持っていました。
本書は、喜八郎の人情味あふれる痛快な活躍を描く人気シリーズの第4弾です。
景気が落ち込んでしまった寛政年間の江戸。深川の広大な火除け地跡で作事が始まり、周囲一帯はその恩恵にあずかるかと思いきや材木問屋の妻籠屋が裏で糸を引き何かを企んでいるという。損料屋の喜八郎は地元を守るため立ち上がり、やがて直接対決の時が――。著者デビュー作にして人気の時代小説シリーズ第四弾。
(本書カバー帯の紹介文より)
富岡八幡宮の表参道までほど近い、蓬莱橋の南詰めにある質屋小島屋当主の善三郎は、後継ぎ息子与一朗の放蕩に悩んでいました。
そこで、通りを挟んで向かい合わせの近所で損料屋を営む喜八郎に相談をしました。
「喜八郎さんに小島屋六代目をお任せしたい。そのうえで、与一朗を喜八郎さんの下で鍛えてください」
損料屋も質屋も、長屋住人の暮らしを支える稼業である。金儲けを考える前に、ひとの役に立つことを目指す者でなければ、進む道を誤るのは必定だ。
「あなたになら、小島屋の身代を安心して預けることができます。ぜひともお引き受けください」
善三郎は正座のまま、こうべを垂れた。
(『牛天神 損料屋喜八郎始末控え』P.24より)
損料屋で、質屋の若旦那・与一朗を預かることになった喜八郎。
そんな中で、深川佃町の旧火除け地が本所のよろず問屋堂島屋によって買われました。
二千坪もの広大な土地に何ができるのか、土地の者たちは恩恵にあずかれると期待を膨らませていました……。
さて、今回、損料屋の喜八郎が相手をするのは、巨大安売り市場を仕掛ける黒幕。
いかなる決着になるのか、興味津々です。
牛天神(うしてんじん)は、小石川(現在の東京都文京区春日)にある北野神社のこと。
境内に、願いが叶う「撫で岩(ねがい牛)」があることで知られています。
牛天神 損料屋喜八郎始末控え
山本一力
文藝春秋 文春文庫
2020年10月10日 第1刷
装画:文月信
装丁:野中深雪
●目次
うしお汁
つけのぼせ
仲町のおぼろ月
にごり酒
春仕込み
牛天神
解説 大矢博子
本文335ページ
単行本『牛天神 損料屋喜八郎始末控え』(2018年1月、文藝春秋刊)を文庫化したもの。
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『損料屋喜八郎始末控え』(山本一力・文春文庫)(第1弾)
『赤絵の桜 損料屋喜八郎始末控え』(山本一力・文春文庫)(第2弾)
『粗茶を一服 損料屋喜八郎始末控え』(山本一力・文春文庫)(第3弾)
『牛天神 損料屋喜八郎始末控え』(山本一力・文春文庫)(第4弾)