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立身流の秋月六平太は、剣友の死の謎を突き止められるのか

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『付添い屋・六平太 猫又の巻 祟られ女』

付添い屋・六平太 猫又の巻 祟られ女金子成人(かねこなりと)さんの文庫書き下ろし時代小説、『付添い屋・六平太 猫又の巻 祟られ女』(小学館文庫)を入手しました。

本書は、付添い屋を生業にする浪人・秋月六平太を主人にした、文庫書き下ろしの時代小説シリーズの第14弾です。
付添い屋とは、裕福な商家の子女が花見や芝居見物に出かける際に、案内と警固を担う侍のこと。

著者は、ドラマ「真田太平記」「剣客商売」「御家人残九郎」など、多くの時代劇を手掛ける名脚本家でもあります。

四谷相良道場の高弟でもある秋月六平太は、道場主の相良庄三郎から森掛藩下屋敷にある立身流兵法『練志館』への代稽古を頼まれた。森掛藩邸にはもう一つ一刀流の道場『興武館』も存在する。これまで親交のなかった両者による初の立ち合いが六平太の面前で行われた。一方、口入屋『もみじ庵』に新しい付添い屋、平尾伝八が雇われた。六平太は見習いとして平尾を付添いに同行させるが、根暗な性格は娘達の反感を買ってしまう。そんな中、瑞聖寺裏の田圃から、先の立ち合いで勝利した『錬志館』田中祥五郎の惨殺死体が発見された。日本一の王道時代劇最新作!
(本書カバー裏の説明文より)

六平太は、かつて信濃国十河藩の江戸屋敷の供番を務めている時分から、立身流を指南する四谷の相良道場によく通っていました。

立身流兵法は、室町時代末期に創始と言われる刀術を中核としているが、ほかに俰(やわら)や槍術、棒術、捕縛術、四寸鉄刀、長刀と、武術全般を網羅している流派です。

立身流の幅広い武術は、藩主の乗り物近辺を警固する役目の六平太にはうってつけだった。そして、今も、付添い屋の仕事がないとき、四谷相良道場の高弟として時折汗を流しています。

ある日、六平太は、道場主の相良庄三郎から、遠州森掛藩下屋敷での代稽古を依頼されました。

 六平太は、稽古に先立って、門人たちの前で師範代の榊を相手に、『向(むこう)』の模範演武を披露した。
 向かい合った相手の攻撃を、『擁刀』で抜いた刀の鎬で受け流すと、振り上げた己の刀を相手の頭に叩き入れる、一瞬を衝く兵法である。
 立ち合いにはもう一つ『圓(まるい)』と呼ばれるものもあった。
 向かい合った相手から斬り込みを『擁刀』で抜いた刀で凌ぎ、斜めに振り上げた己の刀を頭上で素早く円を描くように旋回さえ、刀の重さと遠心力で、一気に相手の頭、あるいは首筋や肩に向けて叩き入れるのだ。
 
(『付添い屋・六平太 猫又の巻 祟られ女』P.62より)

付添い屋稼業での胸のすくような活躍や、六平太を取り巻く人間模様、長屋の面々との交流など、本シリーズには、読みどころというか、時代劇のような見どころがいっぱいあります。

今回は、剣術が大きなテーマになっています。本格的な剣術シーンがあって、六平太の剣友の死の謎を探るミステリー要素も楽しめます。

また、付添いの依頼の得意先である、木場の『飛騨屋』の娘・登世は、生涯独り身を貫こうという、娘ばかりの『いかず連』なるものを結成して、このところ忙しくしていて、気になるところです。

付添い屋・六平太 猫又の巻 祟られ女

金子成人
小学館 小学館文庫
2020年10月11日初版第1刷発行
文庫書き下ろし

カバーイラスト:村上もとか
カバーデザイン:山田満明

●目次
第一話 剣友
第二話 いかず連
第三話 祟られ女
第四話 放生の夜

本文290ページ

■Amazon.co.jp
『付添い屋・六平太 龍の巻 留め女』(金子成人・小学館文庫)(第1作)
『付添い屋・六平太 猫又の巻 祟られ女』(金子成人・小学館文庫)(第14作)

金子成人|時代小説ガイド
金子成人|かねこなりと|時代小説・作家 1949年、長崎県生まれ。脚本家。 1997年、第16回向田邦子賞を受賞。 2014年、『付添い屋・六平太 龍の巻 留め女』で、時代小説デビュー。 ■時代小説SHOW 投稿記事 八丈島から島抜け。兄を...