『おもちゃ絵芳藤』|文春文庫
2020年10月1日から10月10日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2020年10月上旬の新刊(文庫)」を掲載しました。
今回は、谷津矢車さんの『おもちゃ絵芳藤』(文春文庫)を取り上げます。
著者は、第18回歴史群像大賞を重賞して、『洛中洛外画狂伝 狩野永徳』でデビューし、戦国時代を中心に江戸、明治時代を舞台に、精力的に作品を発表しています。
安土桃山時代を代表する絵師を取り上げた著者は、最新単行本の『絵ことば又兵衛』では、武将荒木村重の子で「奇想の絵師」ともいわれる、岩佐又兵衛を描いています。
文久元年(1861)春。大絵師・歌川国芳が死んだ。国芳の弟子である芳藤は、国芳の娘たちに代わって葬儀を取り仕切ることになり、弟弟子の月岡芳年、落合芳幾、かつては一門だった河鍋狂斎(暁斎)に手伝わせ無事に葬儀を済ませた。そこへ馴染みの版元・樋口屋がやってきて、国芳の追善絵を企画するから、絵師を誰にするかは一門で決めてくれ、と言われる。若頭のような立場の芳藤が引き受けるべきだと樋口屋は口を添えたが、暁斎に「あんたの絵には華がない」と言われ、愕然とする――。
(『おもちゃ絵芳藤 (文春文庫)』Amazonの内容紹介より)
本書では、国芳の弟子歌川芳藤に光を当て、兄弟弟子で無惨絵の月岡芳年、新聞錦絵で売れっ子となった落合芳幾、幕末から明治に活躍した天才絵師河鍋暁斎、幕末から明治に活躍した四人の絵師を描いた長編小説です。
江戸っ子に愛された浮世絵。絵を描くことしかできない、不器用な絵師たちが、明治の西欧化の波に押されてもがき苦闘しながらも絵を描き続けます。
おもちゃ絵(玩具絵)とは、江戸時代から明治時代に描かれた浮世絵様式の一つ。子供が玩具として切って貼って組み立てたり、絵本として鑑賞したりするために描かれた浮世絵を指します。国芳も盛んに描いたおもちゃ絵を、芳藤は得意としていました。
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『おもちゃ絵芳藤』(谷津矢車・文春文庫)
『洛中洛外画狂伝 狩野永徳』(谷津矢車・徳間文庫)
『絵ことば又兵衛』(谷津矢車・文藝春秋)