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明治の文明開化の世の中で奮闘する、国芳の娘と弟子たち

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『ニッポンチ! 国芳一門明治浮世絵草紙』

ニッポンチ! 国芳一門明治浮世絵草紙10月30日(金)発売予定の、河治和香(かわじわか)さんの歴史時代小説、『ニッポンチ! 国芳一門明治浮世絵草紙』(小学館)のバウンド・プルーフをいただきしました。

耳慣れない言葉ですが、バウンド・プルーフ(bound proof)とは、正規の刊行に先立ちゲラ刷りを簡易製本して制作されたもの。本の発売前に販促用に関係者に見本として配られ、表紙には、作品のあらすじやキャッチフレーズが並んでいます。プルーフ本とも言います。

ゲラ刷りをお送りいただいて、解説を書いたことはありますが、バウンド・プルーフをいただいたことはありませんでした。製本されていることで読みやすく、とてもうれしいです。

 明治六(1874)年、歌川国芳の十三回忌を前に、唯一の後裔である次女お芳が突如行方不明になっていまった。なんと横浜で異人に春画を描いて売りつけて牢に収監されているという。彼女の怪しげな夫は、国芳の顕彰碑建立資金を持ち逃げして雲隠れだ。波乱の十三回忌に久しぶりに顔を合わせた国芳の弟子たちは、世の流れに乗る者もあれば、世の中に取り残されてあがいてる者もいて様々だ。でも彼らの心の中には、いつも国芳と、そして早世した愛らしい〈国芳の娘〉登鯉がいる。
 そう……いつも心のどこかで〈ヒラヒラ〉は弟子たちを励まし続けてくれているのだ。
(バウンド・プルーフ表紙の紹介文より)

著者の河治和香さんは、上から読んでも下から読んでも、「かわじわか」というユニークなペンネームをお持ちです。

北海道の名付け親で、蝦夷地探検家の松浦武四郎の生涯を描いた『がいなもん 松浦武四郎一代』で、第25回中山義秀文学賞と第13回舟橋聖一文学賞をW受賞しました。

「姉娘の登鯉ちゃんは師匠の奔走っ子だったが……そういえば、下にもなんか可愛げのねぇ、くすんだ娘がいたっけ……」
「妹娘のお芳ちゃんは、絵は上手かったよ。絵の腕前だけでいえば、登鯉ちゃんより上じゃないかねぇ。たしか三枚続きの大錦なども描いていたはずだ」
 松さんは、懐かしそうに語った。弟子といっても、松さんは年の方は師匠の国芳といくつも違わない。

(『ニッポンチ! 国芳一門明治浮世絵草紙』「一、国芳の娘のこと」より)

『ニッポンチ! 国芳一門明治浮世絵草紙』バウンド・プルーフ

『ニッポンチ! 国芳一門明治浮世絵草紙』バウンド・プルーフ

著者の文庫書き下ろしシリーズに、天保から安政にかけて、歌川国芳と弟子たちの浮世模様を描いた「国芳一門浮世絵草紙」(全5巻)があります。
国芳の娘で、“侠風”な美少女・登鯉(とり)がヒロインとして、生き生きと活躍していました。

本書は、「国芳一門浮世絵草紙」の明治篇といったところ。
曲者ぞろいの国芳の弟子たちの明治の奮闘ぶりが描かれているとともに、国芳のもう一人の娘・お芳にスポットが当てられているということで、何とも楽しみです。

ニッポンチ! 国芳一門明治浮世絵草紙

河治和香
小学館

●目次
一、国芳の娘のこと
二、芳虎と芳藤のこと
三、曉斎のこと、そして周延のこと
四、芳年のこと
五、田蝶と小ちん父子のこと
六、圓朝のこと
七、閑話 芳延や芳春のことども
八、芳幾のこと
九、芳宗父子と芸者島次のこと
十、ふたたび国芳の娘のこと

バウンド・プルーフより

304ページ

■Amazon.co.jp
『ニッポンチ! 国芳一門明治浮世絵草紙』(河治和香・小学館)
『がいなもん 松浦武四郎一代』(河治和香・小学館)
『国芳一門浮世絵草紙1 侠風むすめ』(河治和香・小学館文庫)

河治和香|時代小説ガイド
河治和香|かわじわか|時代小説・作家 東京都葛飾区柴又生まれ。日本大学芸術学部卒業。 2003年、『秋の金魚』で第2回小学館文庫小説賞を受賞してデビュー。 2019年、『がいなもん 松浦武四郎一代』で第25回中山義秀文学賞、第13回舟橋聖一...