『深川二幸堂菓子こよみ(三)』
知野みさき(ちのみさき)さんの文庫書き下ろし時代小説、『深川二幸堂菓子こよみ(三)』(だいわ文庫)を入手しました。
極上の江戸スイーツと事件、そして心温まる愛情物語が楽しめる、『深川二幸堂菓子こよみ』シリーズの第3弾。二幸堂のみんなにまた会えたことでうれしい反面、今回が完結篇ということで複雑な心境です。
Minoruさんのカバーイラストを1巻から順に見比べてみて、描かれている人物が一人ずつ増えているのに気づきました。
三巻目に描かれている女性は、大の甘いもの好きで、通いで二幸堂を手伝うお七さんでしょうか。
お七さんならずとも、孝次郎さんが作る二幸堂のお菓子なら、一つずつ味見がしたいし、持ち帰って食べてみたくなります。
――俺には菓子作りしか能がねぇ。
兄・光太郎と弟・孝次郎が営む菓子屋「二幸堂」は、得難い縁に恵まれ「深川に二幸堂あり」との評判を確かなものにしていた。
抹茶餡の青葉を閉じこめた滑らかな葛焼き「結葉」、まろやかな餡を生成りの皮で包んだ蕎麦饅頭「良夜」、ふわりと軽い小豆風味の飴煎餅「福如雲」。愛する人への想いを伝える栗の甘味「家路」……
悲しい記憶も変えられぬ過去もそのままに、幸多かれと願い、これからも共に誓う真心のそばには、いつもとびきりの菓子があった―ー。
江戸深川の菓子屋をめぐる極上の時代小説、感動の完結篇!
(本書カバー裏の紹介文より)
二月前の睦月に、光太郎は、小太郎という息子を連れた寡婦の葉と祝言を挙げて、三人で暮らし始めました。入れ替わりで孝次郎は、二幸堂の近くの裏長屋の九尺二間に住むようになりました。
孝次郎は、一途に想う三味線の師匠・暁音(あかね)に、一世一代の勇気を振り絞って求婚をしますが、暁音にあっさりと交わされてしまい、今まで通り、時折逢瀬を楽しむだけの関係を続けていました。
孝次郎の長屋のはす向かいの九尺二間に、二十歳を過ぎたばかりの若くて愛らしい女、お春が引っ越してきました。
「ねぇ、おっかさん。おれも、こたとおとまりしたい」
「まあ」と、七より先に信が応えた。「彦にはまだちょっと早いわ。せめて七つになるまで待ちなさいな」
(『深川二幸堂菓子こよみ(三)』P.33より)
葉の息子小太郎は、黒江町に引っ越してきてから通い始めた手習い指南所で、孝次郎と同じ長屋の隣の家に住む兄弟、伸太と信次と仲良くなり、一緒に遊ぶ仲となりました。小太郎と信次は同い年の七歳で、伸太は一つ上の八歳。
お七の一人息子の彦一郎は、小太郎より一歳年下の六歳で、二幸堂には姑の信と一緒に遊びに来て、小太郎とも「ひこ」、「こた」と呼び合う仲になっていました。
伸太と信次を加えた、子供たち四人で一緒に遊ぶうちに事件が起こりました……。
江戸時代、幼児の死亡率は高く、「七つまで」は気が抜けないということで、「七つまでは神のうち」と呼ばれていました。
以前に茶屋の看板娘だったお春は、孝次郎に対して、積極的に好意を示していきます。
孝次郎と暁音との関係はどうなるか、二幸堂の繁盛は続くのか。
どのような結末が待ち受けているのでしょうか、先を読み進めたいと思います。
深川二幸堂菓子こよみ(三)
知野みさき
大和書房 だいわ文庫
2020年6月15日第一刷発行
文庫書き下ろし
カバーデザイン:bookwall
カバーイラスト:Minoru
●目次
卯月の結葉(むすびば)
葉月の良夜(りょうや)
長月の福如雲(ふくじょうん)
霜月の家路
終章
本文335ページ
■Amazon.co.jp
『深川二幸堂菓子こよみ』(知野みさき・だいわ文庫)(第1作)
『深川二幸堂菓子こよみ(二)』(知野みさき・だいわ文庫)(第2作)
『深川二幸堂菓子こよみ(三)』(知野みさき・だいわ文庫)(第3作)