『彩菊あやかし算法帖』
青柳碧人(あおやぎあいと)さんの時代小説、『彩菊あやかし算法帖』(実業之日本社文庫)を入手しました。
著者の最新文庫『彩菊あやかし算法帖 からくり寺の怪』が気になって調べてみたら、2017年に第1作の『彩菊あやかし算法帖』(本書)があることに気づきました。
オンライン書店で購入した本は、新刊ながら天地が1ミリ、左右が0.5ミリぐらい短くなっていました。
天地などの部分にグラインダーをかけて汚れを落とし、カバーをつけ替えて、スリップを挿入するという、改装という作業が行われた本でした。
何年か前に返品本の改装作業を見学して以来、お化粧直しをして再び書店に出ていく改装本は気にかかる、なんだか愛おしい存在になりました。
さて、著者の青柳碧人さんは、『むかしむかしあるところに、死体がありました。』が、2020年の本屋大賞にノミネートされて、注目のミステリー作家です。
常陸国牛敷藩の下級武士の娘・車井彩菊は算法が大好きで、寺子屋で教えている。藩内のある村では、妖怪「賽目童子(さいのめどうじ)」への生贄として若い娘をひとり捧げていた。村人に乞われ、彩菊は妖怪とサイコロ勝負をするが……(第一話)。大人気「浜村渚の計算ノート」シリーズの著者が贈る、数学の知識がなくても夢中になれる新感覚「時代×数学」ミステリー!
(本書カバー裏の紹介文より)
主人公の彩菊(あやぎく)は下級武士・車井孝之進の十七になる娘。目が覚めるような黄色の着物に、派手な簪と櫛をまとう、質素倹約を謳う牛敷藩においては似つかわしくないおしゃれ。しかしながら、類まれな算法の才能を持ち、娘だてらに寺子屋で算法を師範しています。
牛敷藩の郡奉行・木川生駒は、彩菊を屋敷に呼び出して、領内の小埜里村に棲みついている、賽目童子なる化け物退治を依頼しました。
「ときに彩菊、今年も賽目童子への供物・生贄の期日が迫っておる」
木川は彩菊に話しかけた。
「お主、小埜里の娘のふりをして賽目童子のもとへ入り、退治することはできまいか」
「なんと」
「もし賽目童子を退治することができたならば、何でも望みのものを取らそう」
(『彩菊あやかし算法帖』「第一之怪 彩菊と賽目童子」P.16より)
賽目童子は、生贄となった娘とさいころ勝負を百回して、六十回娘が勝ったら無事に生きて家に帰し、賽目童子が勝ったら娘を食べると申し渡しました。
二つのさいころの出目の組み合わせは三十六通りで、娘が勝てるのは十五回のみで、賽目童子より先に六十回の勝ちを出すのは至難の業と、生き生きと算法の話をする彩菊に、木川は唖然としながらも、この娘ならがやってくれそうだと期待が湧き上がりました。
「数学」と「時代ミステリ」と「妖怪」の組み合わせが、何とも楽しい新感覚の時代小説です。
主人公が妖怪を倒す武器が算法という設定が面白く、ラノベのような読みやすいストーリー展開で、数学が苦手も楽しめます。
彩菊あやかし算法帖
青柳碧人
実業之日本社 実業之日本社文庫
2017年8月15日発行
単行本『彩菊あやかし算法帖』(2015年10月、実業之日本社刊)を文庫化したもの。
カバーデザイン:大岡喜直(next door design)
装画:友風子
●目次
第一之怪 彩菊と賽目童子
第二之怪 彩菊と紅い亡霊
第三之怪 彩菊と呪われた千手観音
第四之怪 彩菊と一千八十九稲荷
第五之怪 彩菊と逢魔が手毬唄
第六之怪 彩菊と死神絵草紙
あとがき
本文332ページ
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『彩菊あやかし算法帖』(青柳碧人・実業之日本社文庫)
『彩菊あやかし算法帖 からくり寺の怪』(青柳碧人・実業之日本社文庫)
『むかしむかしあるところに、死体がありました。』(青柳碧人・双葉社)