『Cocoon 修羅の目覚め』
夏原エヰジ(なつばらえいじ)さんの伝奇時代小説、『Cocoon 修羅の目覚め』(講談社文庫)を入手しました。
2018年、著者は、「Cocoon」(単行本刊行時に『Cocoon 修羅の目覚め』に改題)で、第13回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞して、いきなりシリーズ化が決まるという、華々しいデビューを飾りました。
新人作家誕生の経緯は、縄田一男さんが本書解説でも触れられています。
シリーズは、2020年8月25日時点で、5作を数えています。
吉原一の花魁として名を馳せる瑠璃には、鬼退治の闇組織「黒雲(こくうん)」の頭領という裏の顔がある。四人の仲間と町に出没する鬼を斬り倒し、密かに江戸の平和を守っているのだ。だがある日、瑠璃の遊女中で唯一の理解者の津笠(つかさ)が失踪。動揺を隠せない瑠璃に無慈悲な運命が襲いかかる。激しい熱が迸る圧巻の滅鬼譚、開幕。
(本書カバー裏の紹介文より)
本書の主人公瑠璃は、吉原の大見世「黒羽屋」の最高級の遊女・花魁。
「花魁、今日の夜見世はお休みになりました」
錠吉は艶やかな黒髪を水油で整えながら、出し抜けに言った。
「えぇっ」
(『Cocoon 修羅の目覚め』 P.28より)
夜見世に備えて、妓楼の若い衆で瑠璃専属の髪結をつとめる錠吉から、裏の仕事が入り、夜見世が休みなったことを告げられました。
瑠璃は抱きしめるように、鬼に覆い被さった。
黒く硬い腹の辺りを、黒い刃がずぶ、と貫いている。
鬼はわめくのをやめた。
瑠璃は鬼に被さったまま、口元にうっすらと笑みを浮かべていた。そして、鬼の耳元にそっとささやいた。
(『Cocoon 修羅の目覚め』 P.51より)
時代は天明。各地で大凶作が起こっていた頃。
瑠璃の裏の仕事は、鬼退治。
吉原の最高級妓楼、黒羽屋は、鬼を対抗できるだけの能力を持つ者たちの暗躍組織「黒雲」の根城でした。
瑠璃は四代目の黒雲頭領で、黒羽屋の若い衆の錠吉、料理番の権三、若い衆見習いの双子の少年・豊二郎と栄二郎を従えて、鬼の脅威から江戸を守っていました。
アクションシーンの連続である壮絶な鬼との闘いの後に、繰り広げられる妖たちとのほっこりとした酒宴のギャップが面白くて、シリーズのファンになりそうです。
Cocoon 修羅の目覚め
夏原エヰジ
講談社 講談社文庫
2020年8月12日第1刷発行
単行本『Cocoon 修羅の目覚め』(2019年8月、講談社刊)を文庫化したもの。
カバー装画:マツオヒロミ
カバーデザイン:坂野公一(welle design)
●目次
なし
解説 縄田一男
本文267ページ
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『Cocoon 修羅の目覚め』(夏原エヰジ・講談社文庫)