『お江戸やすらぎ飯 芍薬役者』
鷹井伶(たかいれい)さんの文庫書き下ろし時代小説、『お江戸やすらぎ飯 芍薬役者(しゃくやくやくしゃ)』(角川文庫)を献本いただきました。
本書は、医学館で働きながら医学を学ぶ少女・佐保が、体に不調を抱える人たちを薬膳料理で癒していく、グルメ時代小説シリーズの第2弾です。
「料理で人を救いたい」幼い頃に両親とはぐれ、吉原で育てられた佐保は、人に足りない栄養を見抜く才能を生かし医学館で勉学を続けていた。ある日、芝居に誘われた佐保はそこで幼馴染みの颯太を見かけた。颯太は芍薬の花のような美貌を持つ人気役者・夢之丞と昵懇の仲だが、その夢之丞が気鬱でふさいでいるという。佐保は夢之丞を料理で癒す大役を任される。佐保が選んだ意外な食材とは? 大好評グルメ時代小説第2弾!
(本書カバー裏の紹介文より)
佐保は、幼い頃に両親と生き別れて、吉原の大見世玉屋で育てられました。
そのままであれば、遊女になるところを、飲食物から得られる栄養で人にとって必要なものがわかる、不思議な才能を見抜いた者のおかげで、医学館に来ることができました。
「なぁ、佐保さんのことだ。何か作ってやったのだろう?」
「はい」
と、佐保は頷いた。
「蓮の実入りの麦粥がよいかと思って……医学館の台所から蓮の実を頂戴しました」
事後承諾になったことを佐保は詫びた。
(『お江戸やすらぎ飯 芍薬役者』 P.47より)
佐保は、あまり乳が飲めていないのか、夜泣きが激しく泣き続ける赤ん坊と、乳が出なくなり育児に悩む母親の様子を見て医学館に戻り、母子に蓮の実入りの麦粥を作りました。その一方で、医学館の督事(館長)で多紀家の主人元胤に母子のことを相談しました。
元胤は、蓮の実が熱を取り、いらだちを鎮める効果があることを教え、佐保の作った料理が病人にとって適したものであったことを認め、一度、母子に医学館に来るように伝えました。
本書の面白さは、佐保の作る薬膳料理が人々のさまざまな苦しみを癒していくところにあります。食材にそれぞれに栄養素や薬効があることを知り、食べることの重要さに改めて気づかされます。
また、佐保が、幼い頃に生き別れた両親と再び会うことができるのかも気になるところです。
お江戸やすらぎ飯 芍薬役者
鷹井伶
KADOKAWA 角川文庫
2020年8月25日初版発行
文庫書き下ろし
カバーイラスト:あわい
カバーデザイン:アルビレオ
●目次
第一話 映し鏡
第二話 春の邪気
第三話 芍薬役者
第四話 鬼の霍乱
第五話 炎の中で
佐保の薬膳料理
本文279ページ
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『お江戸やすらぎ飯』(鷹井伶・角川文庫)(第1弾)
『お江戸やすらぎ飯 芍薬役者』(鷹井伶・角川文庫)(第2弾)