『残照の剣 風の市兵衛 弐』
辻堂魁(つじどうかい)さんの文庫書き下ろし時代小説、『残照の剣 風の市兵衛 弐』(祥伝社文庫)を入手しました。
駆け落ちした、親友の息子・良一郎とその幼馴染みの小春を連れ戻すために、大坂に行っていた唐木市兵衛が事件を解決して、江戸に戻ってきました。
江戸で始まる“風の市兵衛”の新たなる活躍を描く、待望のシリーズ第27巻です。
《宰領屋》矢藤太の許に大店両替商《近江屋》から、唐木市兵衛を名指しで口入の周旋依頼があった。蟄居閉門中の武州川越藩士に手紙を届けてほしいという。二人は川越藩主に国替えの噂があり、資金調達のため圧政下にあると知る。異論を唱えた藩士も改易は必定、その時は江戸に迎えたいというのだ。市兵衛は矢藤太と共に赴くが、到着するや胡乱な輩に囲まれ……。
(本書カバー裏の紹介文より)
川越藩藩士の堤連三郎は、身分の低い地侍ながら、領内の田畑や河川山地を知悉した、能吏で、藩内でも一目置かれる存在でした。ところが、領内を巡った帰路、菅留吉率いる横目役殺生方に、上意討ちをされました。
留吉に背中を斬られて深手を負った連三郎は、城下の流れる赤間川に落ちて、消息を絶ちました……。
寛政十二年(1800)閏四月末、武州川越城下で上意討ちがあった。
それから、二十五年の歳月がすぎた文政八年(1825)夏、十吉郎という男の亡骸が、永富町三丁目の滝次郎店で見つかった。
小雨の煙る夏にしては肌寒い午後だった。
(『残照の剣 風の市兵衛 弐』 P.17より)
亡くなった十吉郎が、二十五年前に上意討ちを逃れて行方をくらましていた連三郎と判明しました。
両替商《近江屋》から名指しで、市兵衛は、蟄居閉門中の川越藩勘定方の村山永正の娘・早菜(さな)に手紙を届けてほしいという依頼を受けました。
そして、市兵衛は、川越藩内の抗争に巻き込まれていきます。
藩内で暗躍する、凶悪な殺生方が市兵衛の前に立ちはだかります。
ちなみに、川越藩をめぐる国替え騒動は、天保十一年(1840)の三方領知替えがよく知られています。
本書が描かれているのは文政八年(1825)の夏で、その序章ともいうべき、別のお話となっています。
残照の剣 風の市兵衛 弐
辻堂魁
祥伝社 祥伝社文庫
2020年8月20日初版第1刷発行
文庫書き下ろし
カバーデザイン:芦澤泰偉
カバーイラスト:卯月みゆき
●目次
序章 赤間川
第一章 百代の過客
第二章 江戸街道
第三章 居合斬り
第四章 蝉の国
終章 養子縁組
本文320ページ
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『残照の剣 風の市兵衛 弐』(辻堂魁・祥伝社文庫)