『渋沢栄一と勝海舟 幕末・明治がわかる! 慶喜をめぐる二人の暗闘』
歴史家の安藤優一郎さんの歴史読み物、『渋沢栄一と勝海舟 幕末・明治がわかる! 慶喜をめぐる二人の暗闘』(朝日新書)を献本いただきました。
2024年に刷新される新1万円札の顔で、2021年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公・渋沢栄一の生涯について、勝海舟、徳川慶喜との関係に光を当てて描いた、歴史読み物です。
渋沢栄一と勝海舟の暗闘は、なぜ、30年も続いたのか!?
新たな視点で、明治維新史再発見!江戸無血開城の立役者として、名声が高まる海舟。
農民、尊攘派の志士、徳川慶喜の家臣を経て大実業家になる渋沢。
共に幕臣ながら、「朝敵」となった慶喜の復権でぶつかり合う。
若き日の渋沢から説き起こし、知られざる二人の関係に光を当てる。
忠節か? 名声か? 歴史の闇が見えてくる!
(本書カバー折り返しの紹介文より)
本章では、大実業家・渋沢栄一の幕末から明治にかけての知られざる活躍、ときには暗闘も紹介されていきます。
栄一は日本資本主義の父と呼ばれ、多くの会社を創立したことで知られる明治の経済人ですが、最後の将軍・徳川慶喜に忠誠を尽くしつづけた顔も持っていたことはほとんど知られていません。
同じ幕臣でありながらも、栄一と勝海舟は、慶喜に対するスタンスが正反対でした。
海舟は戊辰戦争の際に朝敵に転落した慶喜に反省と自重を求め続けます。一方、慶喜に同情的な栄一は、海舟の対応に強い不満の念をいただきます。
海舟は栄一よりも二十歳近く年上だが、互いに自信家で剛毅な性格だったことが人間関係を難しくしていた。維新の動乱を最前線で乗り切り、徳川家の存続に成功した海舟の功績を高く評価した栄一であったが、実際に会ってみると「小僧扱い」されてします。そのプライドは大いに傷付けられた。。
(『渋沢栄一と勝海舟 幕末・明治がわかる! 慶喜をめぐる二人の暗闘』P.3より)
本書では、栄一と海舟、慶喜の三角関係が興味深く描かれていて、旧幕臣たちの維新、明治史に迫っていきます。
同じ著者の『幕末の志士 渋沢栄一』と合わせて、2021年の大河ドラマを楽しむために、栄一の生涯を知りたい方に、とくにおすすめです。
渋沢栄一と勝海舟 幕末・明治がわかる! 慶喜をめぐる二人の暗闘
安藤優一郎
朝日新聞出版 朝日新書
2020年8月30日第1刷発行
カバーデザイン:アンスガー・フォルマ― 田嶋佳子
●目次
プロローグ 栄一・海舟・慶喜の三角関係
第一章 栄一と慶喜の信頼関係のはじまり――農民から武士になる
(1)尊王攘夷の志士として世に出る
(2)一橋家臣に取り立てられる
(3)幕臣となる
第二章 そりが合わない海舟と慶喜――敗戦処理を命じられる
(1)ペリー来航で世に出る海舟
(2)将軍徳川家茂との出会い
(3)長州再征の後始末
第三章 栄一と海舟の出会い――静岡藩での奮闘
(1)江戸開城の立役者となる海舟
(2)彰義隊に結集した渋沢一族
(3)静岡藩の誕生と栄一の帰国
(4)静岡での栄一と海舟
第四章 幕臣が支えた近代国家――明治政府に出仕する二人
(1)引き抜かれる静岡藩士たち
(2)近代化の先兵となった栄一
(3)在野の志が湧く栄一
(4)政府入りした海舟
第五章 海舟への不満が募る栄一――謹慎生活はいつまで続くのか
(1)政府と去った栄一と海舟
(2)徳川家の復権が進む
(3)栄一の苛立ち
第六章 名誉回復への道のり――生命をかけて徳川家を守る
(1)慶喜の皇居参内と海舟の死
(2)慶喜を再び世に出した栄一
(3)慶喜の伝記に込めた栄一の思い
エピローグ 歴史の語り部
渋沢栄一関係年表
参考文献
本文245ページ
■Amazon.co.jp
『渋沢栄一と勝海舟 幕末・明治がわかる! 慶喜をめぐる二人の暗闘』(安藤優一郎・朝日新書)
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