『柳生侍 真剣勝負(二) 始動』
上田秀人さんの文庫書き下ろし時代小説、『柳生侍 真剣勝負(二) 始動』(小学館文庫)を入手しました。
大坂一の唐物問屋淡海屋右七衛門の孫で、柳生但馬守宗矩の隠し子、一夜(かずや)は、宗矩に呼び出されて、勘定方の侍となって柳生家の家政を支える、痛快時代小説シリーズの第2弾です。
本シリーズの面白さの一つは、将軍家剣術指南役の家柄で剣の遣い手はいくらでもいるという剣術の家、柳生家の中に、大坂一の商人を目指す一夜が放り込まれたことから、化学反応のように起こる事件の数々が痛快な点にあります。
弱みは財政――大名を監察する惣目付の企てから御家を守らんと、柳生家当主の宗矩は、勘定方を任せるべく、己の隠し子で、商人の淡海屋一夜を召し出した。渋々応じた一夜だったが、柳生の庄で十兵衛に剣の稽古をつけられながらも石高を検分、殖産興業の算盤を弾く。旅の途中では、立ち寄った京で商談するなど卒がない。が、江戸に入る直前、胡乱な牢人らに絡まれ、命の危機が迫る……。三代将軍・家光から会津藩国替えの陰役を命ぜられた宗矩。一夜の嫁の座を狙う、信濃屋の三人小町。騙し合う甲賀と伊賀の忍者ども。各々の思惑が交錯する、波乱万丈の第二弾!
(本書カバー裏の紹介文より)
大和・柳生の庄を訪れた一夜は、護衛で逃げ出さないように見張り役の武藤大作と江戸へ向かう旅の途中で、商談のために京へ立ち寄りました。
店を見つけた一夜が、武藤大作に顔を向けた。
「ええか、なんも口出ししたらあかんで」
「商いのことはわかりませぬゆえ」
念を押された武藤大作が大丈夫だと応えた。
「黙っときや」
もう一度釘を刺して、一夜が暖簾を潜った。(『柳生侍 真剣勝負(二) 始動』P.48より)
武藤は、京で早速、一夜より商いのいろはを教わります。
武士と商人の考え方の違いが描かれていて面白く感じられます。
宗矩の大名昇格に妬みを持つ、惣目付の秋山修理亮正重から、柳生の庄を探れと命じられた甲賀組の忍びが、一夜たちの後を尾行しました。
江戸へ向かう、一夜に危機が迫ります。
一方、一夜が大坂一の商人になると見込み見初めた、京橋で味噌醤油を扱う信濃屋の三姉妹(永和、須乃、衣津)は、一夜の嫁の座を争い、静かな戦いを始めました……。
大坂ことばを使うユニークな主人公、次々とヤマ場があるストーリー展開、エンタメ度が高い、上田ワールド全開で、今回も一気読み必至です。
柳生侍 真剣勝負(二) 始動
上田秀人
小学館 小学館文庫
2020年8月10日初版第1刷発行
文庫書き下ろし
カバーイラスト:西のぼる
カバーデザイン:鈴木俊文(ムシカゴグラフィクス)
●目次
第一章 商いのいろは
第二章 真剣の重み
第三章 父と子
第四章 禄と女
第五章 天守再建
本文292ページ
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『柳生侍 真剣勝負(一) 召喚』(上田秀人・小学館文庫)
『柳生侍 真剣勝負(二) 始動』(上田秀人・小学館文庫)