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「情」の剣術者と「理」の知恵者、二人の徒目付が正義を貫く

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『徒目付 情理の探索 純白の死』

徒目付 情理の探索 純白の死青木主水(あおきもんど)さんの長編歴史時代小説、『徒目付 情理の探索 純白の死』(小学館文庫)を入手しました。

毎月、文庫書き下ろしの時代小説を刊行している、小学館時代小説文庫から、楽しみな作品が登場しました。

著者は、プロフィールによると、1961年、岐阜県出身で、会社員を経て起業、歴史系の記事を執筆するライターとして活躍され、本書が小説家デビュー作だそうです。

上司である公儀目付の影山平太郎から命を受けた。徒目付の望月丈ノ介は、さっそく相方の福原伊織へ報告するため、組屋敷へ向かった。二人一組で役目を遂行するのが徒目付なのだ。正義感にあふれ、剣術をよく遣う丈ノ介と、かたや身体は弱いが、推理と洞察の力は天下一品の伊織。ふたりは影山の「小普請組前川左近の新番組頭への登用が内定した。ついては行状を調べよ」との言に、まずは聞き込みからはじめる。すうに左近が文武両道の武士と知れたはいいが、双子の弟で、勘当された右近の存在を耳にし――。最後に、大どんでん返しが待ち受ける、本格派の捕物帳!
(本書カバー裏紹介より)

望月丈ノ介は公儀徒目付(かちめつけ)で、直心影流の遣い手。二十八歳で、六尺近い長身、がっしりした体で、戦国の世に生まれたならば長柄の鑓を手に戦場を疾駆し、数々の手柄を立てたと想像させる風貌をもつ快男児です。

下谷仲御徒町にある組屋敷に、母房江と五歳になる娘真奈の三人で暮らしていました。妻は二年前に死別していました。

二人で組んで役目を遂行する相方、福原伊織は丈ノ介と正反対な風貌をもち、虚弱体質で病弱です。明晰な頭脳を持ち、洞察力、推理力にすぐれていて、思い込みが激しく視野が狭く、猪突猛進型の丈ノ介のベストパートナーです。

医者嫌いで独学で医学書を読み、薬を煎じて治療する伊織は、甘い物に目がありません。早くに両親を病気で亡くし、丈ノ介の屋敷の向かいで、妹結衣と二人住まいしています。

弘化三年(1846)の二月、丈ノ介は上司で公儀目付の影山平太郎から、「小普請組前川左近の行状を調べよ」と命じられます。

左近は、新番組頭への登用が内定していて、左近を推挙した小普請組支配大辻玄蕃には、賂を受け取っているとよからぬ噂があり、玄蕃については別の者が探索に当たっていると。

探索費として五両を支給された丈ノ介は、三番町にある影山の屋敷を辞すと、組屋敷に戻り、黒門町の菓子屋で買った今川焼を手に、伊織の屋敷を訪れ、役目の話をします。

 伊織は風邪を患っていた。透き通るような白い肌が男前を際立たせているが、熱が下がらないようで瞼が腫れぼったく、何処か憂いを感じさせもする。
「影山さまから御役目をおおせつかった。小普請組前川左近の行状を調べろということだ」
 丈ノ介が告げると、
「そうかい」
 生返事をして伊織はあくびを噛み殺した。

(『徒目付 情理の探索 純白の死』P.12より)

目付は、旗本・御家人の監察をする役目で、目付で実績を積めば下三奉行(小普請奉行・普請奉行・作事奉行)や大坂町奉行、長崎奉行などの遠国奉行に昇進し、さらに勘定奉行、江戸町奉行など幕閣の一翼を担うことも可能という出世コースで、旗本の中から特に優秀な者が選ばれました。

目付のもとで探索を行う徒目付の働きが目付の出世に影響を与えます。また、徒目付は、目付の昇進にともない、自身も昇格する道が開け、そこに強力な主従関係が生じます。

本書の特長は、徒目付という役目に注目し、対照的な二人の若者が相棒となって、その役目を果たしていくところにあります。

物語は弘化三年を舞台にしていて、幕末に活躍する偉人の一人も、蘭学を学ぶ若き日の姿で登場します。

入手した本の紹介はここまでとして、四連休の初日、新人作家のデビュー作を楽しみたいと思います。

徒目付 情理の探索 純白の死

青木主水
小学館 小学館文庫
2020年7月12日初版第1刷発行

文庫書き下ろし

カバーイラスト:浅野隆広
カバーデザイン:鈴木俊文(ムシカゴグラフィクス)

●目次
第一話 武士道の果て
第二話 純白の死
第三話 瓢箪から駒

本文290ージ

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『徒目付 情理の探索 純白の死』(青木主水・小学館文庫)

青木主水|時代小説ガイド
青木主水|あおきもんど|時代小説・作家 1961年、岐阜県出身。 会社員を経て、起業。歴史をテーマとした記事を執筆後、『徒目付 情理の探索 純白の死』で小説家デビュー。 ■時代小説SHOW 投稿記事 amzn_assoc_ad_type =...