『源平妖乱 信州吸血城』
武内涼さんの時代小説書き下ろしシリーズ、『源平妖乱 信州吸血城』(祥伝社文庫)を入手しました。
『不死鬼(ふしき) 源平妖乱』に続く、平安末期・源平時代を舞台に、血吸い鬼(吸血鬼)と、人に仇なす鬼を狩る、影御先(かげみさき)と彼らと行動をともにする源義経の死闘を描く、伝奇ロマンの第2弾です。
平安末期の京都に巣喰う血を吸う鬼《殺生鬼》を一掃した《影御先》だが、その代償は大きかった。組織再編のため信濃に集結したが、吸血の主・黒滝の尼の妖術で壊滅したばかりか、古より伝わる霊宝を奪われてしまう。退路を断たれた影御先の源義経と巴は、木曾義仲の援護を受け、生き残った仲間と血戦を挑む。しかし、邪悪な罠は十重二十重に仕掛けられていた!
(カバー裏面の説明文より)
仁安二年(1167)、陸奥国安達ヶ原の黒滝の尼のもとを、妖鬼となって天下の全てを握ることを望む一人の僧、西光が訪れました。黒滝の尼は、西光を、手先たちの集団・冥闇ノ結の首領として迎え、自身は相談役となりました。
、
黒滝の尼は悪名高い不死鬼である。
血吸い鬼に、三種ある。
不殺生鬼――人を殺さぬ、生ける血吸い鬼。
殺生鬼――人を殺す、生ける血吸い鬼。
不死鬼――殺生鬼が甦った、死せる血吸い鬼で、人の心をあやつるなど強い力をもつ。この不死鬼にコントロールされた血吸い鬼を従鬼(じゅうき)と呼んだりする。
(『源平妖乱 信州吸血城』P.38より)
八年後の承安五年、信州熊井郷に、濃尾や信州三州などを縄張りとする、影御先、四十人近い男女が集まりました。その中には巴と十七歳の源義経とその家来、少進坊、伊勢三郎義盛が加わっていました。
いかほどの敵が中で待ち受けているか、計り知れぬ。巨大な警戒、本能的な不安が、義経をおおう。だがいかなる者が隠れていようとも、この穴に踏み込まねば。
……浄瑠璃のような者を、もう出してはいけない。浄瑠璃と鬼一法眼、不死鬼のせいで過去に死んだ人々が、今の義経をつき動かしている。もっと言えば、物心つく前に斃れた父、義朝の存在と、母と離れ離れに暮らさねばならなかった経験が、父の仇が牛耳る今の世に、根本的な疑念をいだかせている。(『源平妖乱 信州吸血城』P.83より)
真言立川流は、血を啜り人肉を喰らう妖女神・荼枳尼天(だきにてん)を崇め、全ての戒律を破ることを教える破戒壇を持ち、血吸い鬼と縁深い邪宗でした。
義経ら影御先たちは、塩尻の市を取り仕切る大有徳人であり、邪鬼の熊井長者が建てた立川流道場へ乗り込みました……。
源義経、巴、木曾義仲の戦いに、黒滝の尼が率いる、血吸い鬼たちが妖しく絡んでいく、壮大なスケールえ繰り広げられる、伝奇ロマンの第2弾。興奮が止まりません。
源平妖乱 信州吸血城
武内涼
祥伝社 祥伝社文庫
2020年5月20日初版第1刷発行
文庫書き下ろし
カバーデザイン:芦澤泰偉
カバーイラスト:フジワラヨウコウ
●目次
序
第一章 熊井長者
第二章 奸計
第三章 死闘
第四章 月の堂
第五章 戸隠
第六章 妖獣陣
第七章 九重塔
引用文献とおもな参考文献
本文449ページ
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『源平妖乱 信州吸血城』(武内涼・祥伝社文庫)
『不死鬼 源平妖乱』(武内涼・祥伝社文庫)