『新酒番船』|光文社文庫
2020年6月1日から6月10日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2020年6月上旬の新刊(文庫)」を掲載しました。
今回は、光文社文庫から刊行される、佐伯泰英さんの『新酒番船(しんしゅばんふね)』を取り上げます。
本書は、シリーズものを除くと、著者の久々の文庫書き下ろし長編となります。
新酒番船(「しんしゅばんせん」とも読む)とは、毎年11月に伊丹や灘など関西の酒造どころの新酒を積んだ樽廻船を、大坂と西宮の廻船問屋らが1隻ずつ仕立て、西宮と江戸間を競争して輸送したものをいいます。
ヨットレースのように操船術の巧拙が大きく影響し、結果は到着順位で競われました。5日前後で走るのが普通といわれる中で、速いときには58時間で走破したという記録もあるそうです。
海次は十八歳。丹波杜氏である父に倣い、灘の酒蔵・樽屋の蔵人見習となったが、海次の興味は酒造りより、新酒を江戸に運ぶ新酒番船の勇壮な競争にあった。番船に密かに乗り込む海次だったが、その胸にはもうすぐ兄と結婚してしまう幼なじみ、小雪の面影が過っていた――。海を、未知の世界を見たい。若い海次と、それを見守る小雪、ふたりが歩み出す冒険の物語。
(Amazonの内容紹介より)
新酒番船は、ヨットマンで時代小説家の二宮隆雄さんの『千石船風濤録』を読んで以来、心躍らせる題材の一つです。
千野隆司さんの『大店の暖簾 下り酒一番』でも描かれています。
今回は、著者の初期の『鎌倉河岸捕物控』を想起させるような、若い主人公が登場する、青春小説のテイストもあるようで、どのような作品になっているか、楽しみです。
■Amazon.co.jp
『新酒番船』(佐伯泰英・光文社文庫)
『橘花の仇 鎌倉河岸捕物控』(佐伯泰英・ハルキ文庫 時代小説文庫)
『千石船風濤録』(二宮隆雄・実業之日本社)
『大店の暖簾 下り酒一番』(千野隆司・講談社文庫)