『新・時代小説が書きたい!』
鈴木輝一郎さんの小説技法の解説書、『新・時代小説が書きたい!』(河出書房新社)を入手しました。
著者は、『浅井長政正伝』『金ヶ崎の四人 信長、秀吉、光秀、家康』など歴史時代小説作品を多数発表されている時代小説家。
『国書偽造』を読んで以来、ずっと気になっている作家の一人です。
執筆活動のかたわら、オンラインでの小説講座を主催されていてます。
その講座からは、新人賞・文学賞の受賞者を輩出しています。
著者自身が山村正夫さんの小説講座(山村教室)の出身であることも興味深いです。
登場人物の履歴作成法、年表の作り方、資料の選び方、間違いやすい「暦法」「不定時法」の解説等、最新情報満載! 作家志望者始め、時代小説をより楽しみたい方、必読の書!
(カバー帯の内容紹介より)
本書では、著者自身の経験や作品をベースに、時代小説の書き方から、デビューの仕方まで解説していきます。
著者は、時代小説と歴史小説を区分して、執筆の要諦を分かりやすく説明していきます。
歴史小説は「過去に実在した事件・人物を素材にして小説の形として書くもの」
時代小説は「過去に実在したかもしれない場所を素材にして、架空の話を書くもの」
歴史小説の場合は、登場人物もプロットもストーリーも動かせない場合が多いこともあって、素材よりも、むしろどういった切り口なり見方なりで歴史的事件をみてゆくか、が焦点となります。
時代小説の場合は、いつの時代にするか、どんなキャラクターを配置するか(後略)
(『新・時代小説が書きたい!』P.13より)
本書は、「新」とタイトルについているように、2004年に刊行した『時代小説が書きたい!』を大幅に改稿した、16年ぶりの新訂版となります。
時代小説は、いつも新しい。
前著『時代小説が書きたい!』をあらわしてから十六年が経過した。この間、歴史・時代小説をとりまく状況も大きく変わり、本書を刊行するにあたって大幅に改稿した。
(『新・時代小説が書きたい!』「あとがき」P.204より)
あとがきによると、主な改訂箇所は、以下の通りです。
・パソコンでの執筆環境の変化
・日本史の情報収集環境の激変
・デビューする方法の変化
時代小説好きなら、どのように時代小説が執筆されていくのか、気になる舞台裏が楽しめる、肩の凝らない読み物となっています。
新・時代小説が書きたい!
著者:鈴木輝一郎
河出書房新社
2020年5月30日初版発行
『時代小説が書きたい!』(2004年5月、河出書房新社刊)を大幅に改稿したもの
装幀:坂川栄治+鳴田小夜子(坂川事務所)
●目次
まえがき
第一章 歴史・時代小説 腕を組んでから本になるまで
1 何はともあれまず打ちあわせ
2 書き出す前の準備
3 歴史小説はマギー司郎だ
4 時代小説は娯楽小説の王だ
5 時代小説とパソコン
6 パソコンだけでは追いつかない
第二章 時代小説家 投資と資料と勉強と年齢と
1 ライバルは司馬遼太郎・藤沢周平・池波正太郎
2 定年過ぎても遅くない
3 古文・漢文はこわくない
4 こんな史料を使ってます
5 図書館をつかいまくれ
第三章 ここでコケない勘どころ 時代考証の初歩の初歩
1 目立つところでしくじらない
2 江戸時代 二百六十年あるのを忘れない
3 戦国時代 激しい技術革新があったのを忘れない
4 名前とセリフ 本人たちもわかるめぇ
5 衣服 普段着には和服をどうぞ
6 暦法 いざとなったら花札
7 不定時法 太陽にほえろ!
8 戦国と仏教と武士道と
第四章 書いた原稿をどうするか いざ、勝負!
あとがき
本文208ページ
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『新・時代小説が書きたい!』(鈴木輝一郎・河出書房新社)
『浅井長政正伝』(鈴木輝一郎・人物文庫)
『金ヶ崎の四人 信長、秀吉、光秀、家康』(鈴木輝一郎・毎日新聞社)
『国書偽造』(鈴木輝一郎・新潮文庫)