『花しぐれ 御薬園同心水上草介』
梶よう子さんの時代小説、『花しぐれ 御薬園同心水上草介』(集英社文庫)を入手しました。
本書は、薬草栽培や生薬の精製につとめる、小石川御薬園同心の水上草介(みなかみそうすけ)を主人公とする、連作時代小説シリーズの第3弾です。
未曽有の流行り病が広まる中、漢方蘭方融合の施術を快く思わない目付の鳥居耀蔵が送り込んだ役人により、水上草介は危機を迎えてしまう。薬草栽培、生薬精製を行う小石川御薬園同心としてつとめながら人を救い己も救われてきたことを思い、草介は決意を新たにするのだった。「ここは命を救う処であって、命を奪おうとする者はひとりもいません」と。時代の幕開けは近い。シリーズ大団円の全八篇!
(カバー裏の内容紹介より)
草介は、四季折々、日々変化する植物を常に近くで見ていたい、土に触れ、種を蒔き、水をやり、その生育を見守りたい、御薬園同心を天職のように思う若者でした。
しかし、御薬園で働くうちに、医学を学び、病を知り、薬草をさらに究めることが必要だと気づく、本草学でなく薬学を修めたいと思うようになりました。
紀州藩に仕える儒者で、尚歯会を立ち上げた遠藤勝助の推挙により、二年後に紀州藩の医学館への遊学も決まっていました。
数日後、御役屋敷前の乾薬場で、採取した薬草を干していた草介の元に、黒紋付の羽織を着た男がやってきた。
草介が顔を上げると、低い声で、
「目付の鳥居耀蔵だ」
険しい眼つきをして名乗った。この方が、と草介は股立ちを取った袴を急いで整え、頭を下げた。
「お初にお目にかかります。御薬園同心の水上草介です」
(『花しぐれ 御薬園同心水上草介』P.39より)
草介の前に、蘭学者を敵視する目付の鳥居耀蔵が現れました。
そして、配下の小人目付の新林鶴之輔を御薬園と養生所の監視と査察のために詰めさせました。
尚歯会に関係する遠藤や高野長英と面識がある、草介に危機が迫ります。
妖怪・鳥居の出現で、物語は一気にクライマックスに突入します。
表紙装画に描かれている祝言のシーンも気になります。
花しぐれ 御薬園同心水上草介
著者:梶よう子
集英社文庫
2020年4月25日第1刷
2017年5月、集英社より単行本刊行
カバーデザイン:高橋健二(テラエンジン)
装画:卯月みゆき
●目次
葡萄は葡萄
獅子と牡丹
もやしもの
栗毛毬(りつもうきゅう)
接骨木(にわとこ)
嫁と姑
猪苓(ちょれい)と茯苓(ぷくりょう)
花しぐれ
解説 細谷正充
本文271ページ
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『桃のひこばえ 御薬園同心水上草介』 Kindle版(梶よう子・集英社文庫)(第1作)
『柿のへた 御薬園同心水上草介』(梶よう子・集英社文庫)(第2作)
『花しぐれ 御薬園同心水上草介』(梶よう子・集英社文庫)(第3作)