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生類憐みの令で最強の犬侍、改易に揺れる播州赤穂に見参

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『北前船用心棒 赤穂ノ湊 犬侍見参』

北前船用心棒 赤穂ノ湊 犬侍見参赤神諒(あかがみりょう)さんの文庫書き下ろし時代小説、『北前船用心棒 赤穂ノ湊 犬侍見参』(小学館文庫)を入手しました。

著者は、2017年、「丹生島城の聖将」(単行本時のタイトル『大友の聖将(ヘラクレス)』)で小説現代長編新人賞最終候補となり。同年、「義と愛と」(単行本時のタイトル『大友二階崩れ』)で、第9回日経小説大賞を受賞して作家デビューをしました。

本書は、戦国時代を描いてきた作者が、生類憐みの令下の江戸時代を描いた初めての文庫書き下ろし時代小説です。

元禄十四年初夏、犬侍・千日前伊十郎と相棒の白い柴犬を乗せ、蓬莱丸は播州赤穂に向け出航した。生類憐みの令のもと、犬を従える犬侍は最強の用心棒だ。塩受け取りのため、刃傷事件で騒然とする赤穂藩に先乗りした蓬莱丸の炊(かしき)・権左と伊十郎は筆頭家老・大石内蔵助から、赤穂藩改易は犬公方・綱吉を操る犬侍の仕業だと聞かされる。塩受け渡しの当日、塩田の浜に甲斐犬を使う犬侍・黒虎毛が立ち塞がる。身構える柴犬シロ。ついに、伊十郎の龍王剣音無しの秘太刀が虚空に舞う。
(カバー裏の内容紹介より)

本書の主人公、千日前伊十郎は、出自不明、年齢不詳の犬侍です。
犬侍とは、本来は臆病な侍に対して用いられる蔑称でしたが、元禄の世ではまったく違う意味合いを持っていました。

生類憐みの令によって守られてる犬を鍛錬して自在に使いこなす者をいい、刀に加えて、天下無敵の犬を「武器」として駆使する犬侍は当代最強の侍でした。

その犬侍の伊十郎を用心棒として乗せる、北前船の蓬莱丸の今回の航海はよほど重要なものであるに違いありません。

「伊十郎さんはもしかして犬侍、なの……?」
「ああ、罪深い商売さ。大金を払うって、蓬莱屋に口説かれたもんでね。俺に用心棒を頼むってことは、よほど大事な積み荷でも運ぶのか、それとも、人にはとても言えない悪巧みをしているのか。いや、両方かもな」

(『北前船用心棒 赤穂ノ湊 犬侍見参』P.50より)

伊十郎には、「シロ」の名で呼ばれるメスの柴犬がいます。
全身は羽二重餅のように真っ白でやわらかそうだが、形のよい三角の耳は縁が薄茶色で、中は薄桃色をしていました。存外に整った顔立ちで凛々しい顔つきながら、眼差しは優し気げともいえました。
武器というだけでなく、寝食をともにして一緒に暮らす相棒です。

「今は、何が儲かるんだ」
 湊を行き交う人々を眺めながら伊十郎が問うと、天野屋はキセルに刻み煙草をていねいに詰めながら即答した。
「塩ですわ。特に、これからしばらく、赤穂の塩は値がつり上がります」

(『北前船用心棒 赤穂ノ湊 犬侍見参』P.68より)

蓬莱丸は、出見(いでみ)の浜の沖合に停泊していました。
出見は住吉大社に程近く、名物の高灯籠とともに『摂津名所図会』や広重の『六十余州名所図会』に「住よし 出見のはま」にも描かれています。

伊十郎は、大坂の豪商天野儀兵衛から、住吉大社の茶屋で、浅野家の改易による赤穂の状況を聞きました。「赤穂は今の日ノ本で、一番ややこしい町ですわ。いつ赤穂藩士たちが暴発しても、おかしゅうない。大事な用でもないかぎり、行かんほうが身のためでっしゃろうな」と忠告を受けました。

ところが、その後、伊十郎と蓬莱丸の十五歳になる炊(かしき)の権左は、蓬莱丸に乗り込むと、船で諸事万端を取り扱う責任者の知工(ちく)から、兵庫ノ湊で下船して、、塩の受け取りのために赤穂へ先乗りをするように命じられます。

騒乱のるつぼと化した赤穂の地で、どんな騒動が待ち構えているのか、興味津々の伝奇時代小説が始まります。

著者は、弁護士で、上智大学法科大学院教授として活躍されている傍ら、精力的に時代小説の執筆活動をされているという自身のことに触れながら、「二刀流のすすめ」のメッセージを学生たちに贈られていました。

越智敏裕教授より、日経小説大賞受賞を記念して、学生・受験生の皆さんにメッセージです。 | お知らせ | 上智大学法学部・大学院法学研究科(法律学専攻)

※著者名の「神」は正しくは「示」と「申」の「神」ですが、環境依存文字で文字化けすることがあるため、「神」を使用しています。

北前船用心棒 赤穂ノ湊 犬侍見参

著者:赤神諒
小学館文庫
2020年5月13日第一刷発行
文庫書き下ろし

カバーイラスト:影山徹
カバーデザイン:鈴木俊文(ムシカゴグラフィクス)

●目次
序編 抜かずの刀
序章 住吉大社の高灯籠
第一章 出見ノ湊
第二章 昼行燈と夏火鉢
第三章 犬勘定
第四章 開城前夜
第五章 黒虎毛
最終章 赤穂二人芝居
主な参考文献

本文344ページ

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『北前船用心棒 赤穂ノ湊 犬侍見参』(赤神諒・小学館文庫)
『大友の聖将(ヘラクレス)』(赤神諒・角川春樹事務所)『大友二階崩れ』(赤神諒・日本経済新聞出版)

赤神諒|時代小説ガイド
赤神諒|あかがみりょう(赤神諒)|時代小説・作家 1972年京都市生まれ。同志社大学文学部卒。 法学博士、上智大学法科大学院教授。弁護士。 2017年、「丹生島城の聖将」(単行本時のタイトル『大友の聖将(ヘラクレス)』)で第12回小説現代長...