植松三十里さんの文庫書き下ろし長編小説、『レイモンさん 函館ソーセージマイスター』(集英社文庫)を献本いただきました。
本書は、大正末期の函館で、本場のソーセージ作りに奮闘した、ドイツ人マイスター、カール・ヴァイデル・レイモンと日本人妻コウの愛と信念を描いた物語です。
大正末期の函館。旅館の娘コウは客のレイモンと知り合う。ソーセージ職人で缶詰の指導に来たドイツ人だ。恋した二人は天津まで駆け落ちし結婚。チェコで開いた店は繁昌するが、コウの望郷の念を察したレイモンは函館での開店を決意。だが、肉食習慣のない日本人に受け入れられず、戦争が外国人に過酷な仕打ちを……。
健康で平和な暮らしを実現しようとソーセージ作りに奮闘する夫婦の愛と信念の物語。
(カバー裏の内容紹介より)
函館一の宿屋、勝田旅館の娘コウが、家出をして、中国の天津に駆け落ちするシーンから始まります。お相手は、ボヘミア地方のカールスバート(カルロヴィ・ヴァリと呼ばれる、現在のチェコ共和国)出身で、マイスターという国家資格をもつソーセージ職人カール・ヴァイデル・レイモンです。
勝田旅館には世界各国から客がやってきました。コウは幼い頃から、外国に憧れを抱いてきました。世界を旅してきたレイモンと意気投合しました。
そして、子供の頃から、美味しいソーセージを作るために肉を混ぜてきたという大きな手に心惹かれました。
レイモンが落ち合おうと指定してきた場所は、天津アスターホテルのロビー。そこで数ヶ月ぶりに恋人と会うのだ。どうしても会いたい。合わずにいられない。
愛しい人との再会を夢見て、コウは吹雪の中を歩き続けた。
「手の大きい人」
それが一年近く前に、初めてレイモンに会った時の印象だった。(『レイモンさん 函館ソーセージマイスター』P.18より)
若い二人の国を越えた恋愛と行動力に圧倒されながら、物語の世界に引き込まれます。
二人の素顔に迫りながら、大正末期から昭和という激動の時代を描いた小説となっています。
なお、著者には、外国人と日本人の国際結婚夫婦の物語というと、国産ウイスキー作りに奮闘した竹鶴政孝とスコットランド人妻リタを描いた『リタとマッサン』があります。連続テレビ小説「マッサン」のモデルです。
レイモンさん 函館ソーセージマイスター
著者:植松三十里
集英社文庫
2020年3月25日第1刷発行
カバーデザイン:木村典子(Balcony)
イラストレーション:ヤマモトマサアキ
●目次
吹雪をついて
短い夏
めぐり逢い
異邦人
ドイツ軍艦
北の大地
背信の結末
無国籍
花嫁の父
薄れゆく記憶
あとがき
解説 合田一道
本文311ページ
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『レイモンさん 函館ソーセージマイスター』(植松三十里・集英社文庫)
『リタとマッサン』(植松三十里・集英社文庫)