富樫倫太郎(とがしりんたろう)さんの長編時代小説、『北条早雲1 青雲飛翔篇』を入手しました。
富樫さんは、晩年の北条早雲に見出されて、北条家の軍配者となる風間小太郎の青春を描く戦国時代エンターテインメント『早雲の軍配者』で注目され、2020年3月には『北条氏康 二世継承篇』の刊行も予定されています。
本書は、著者のライフワークともいうべき北条サーガの中核に位置する、「北条早雲」全五巻シリーズの始まりの一冊です。
後に「北条早雲」と呼ばれることになる伊勢新九郎。父の領地・備中荏原郷で過ごした幼少期から、都で室町幕府の役人となり、駿河でのある役目に乗り出すまで――稀代の悪人にして、一代で伊豆・相模を領する大名に成り上がった英傑は、いかにして自らの道を切り拓いたのか。その知られざる物語が幕を開ける!
(カバー裏の内容紹介より)
北条早雲は、戦国時代において異色の存在です。
室町幕府の役人から、身ひとつで駿河に下り、ついには伊豆・相模を領する戦国大名にのし上がるという異様な出世を果たしています。
元服して伊勢新九郎と名乗り、伊豆に攻め込むときに出家し、宗瑞と号し、隠居してからは早雲庵宗瑞と呼ばれました。しかしながら、生前、「北条早雲」と名乗ったことはありません。
ある時は、戦国の三悪人の一人に数えられます。あとの二人は、斎藤道三と松永久秀で、いずれも、下剋上の権化と呼ばれています。
一方で、彼の領地に暮らす民を慈しんで、民も彼を慕い、晩年、韮山城で隠居生活を送る彼を「韮山さま」と呼んで敬愛しました。
例えば、彼は、人との繋がりを大切にし、約束を守る男だった。
例えば、彼は、謙虚な男だった。
例えば……。
彼が生きた時代、諸国をぐるりと見回しても、彼のような領主はどこにも見当たらない。
それが何とも奇妙であり、その生き方が風変わりに思えるのだ。(『北条早雲1 青雲飛翔篇』序 P.9より)
本書の序で、早雲の性格を、思いやり深く、謙虚だったのは生まれついてものではなく、人生のある時点で自分の人格を明確に規定し、自分の生き方を決めたからだと、著者は書いています。
早雲は、自分の理想とする姿を思い描き、生涯を費やして、その理想に近づこうとしました。
この序文を読み、早雲という男に惹かれ、彼が生きた時代を作品を通して辿っていってみたいと強く思うようになりました。
カバーイラスト:森美夏
カバーデザイン:bookwall
●目次
序
第一部 備中荏原郷
第二部 上洛
第三部 伽耶
第四部 駿河
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『北条早雲1 青雲飛翔篇』(富樫倫太郎・中公文庫)
『早雲の軍配者 上』(富樫倫太郎・中公文庫)
『北条氏康-二世継承篇』(富樫倫太郎・中央公論新社)