金子成人さんの人気時代小説シリーズの最新刊、『付添い屋・六平太 妖狐の巻 願掛け女』を入手しました。
主人公、秋月六平太(あきづきろっぺいた)は、かつて、信濃国、十河藩江戸屋敷の供番を勤めていました。供番とは、参勤で江戸に出府した藩主の外出の折りに、乗り物の近辺を警固する役目です。
刀術の剣や居合のほかに、柔術、槍術、長刀、棒術、手裏剣など多岐にわたる武芸である立見流兵法を修めていて、浪人となってからは生業にしているのが「付添い屋」。裕福な商家の子女が花見や芝居見物に出かける際、案内と警固を担う仕事です。
本書は、「付添い屋六平太」シリーズの第13作となります。
浪人・秋月六平太が付添い屋として稼ぐ手当てを得てからそろそろ十年になろうとしていた。ある夜、頬被りをした男に刃物で寝床を襲われて以来、只ならぬ殺意が六平太の身辺を漂いはじめる。訝しみつつも、『飛騨屋』のお内儀・おかねの咳止め願掛けの付添いや、日本橋堀江町の湯屋『天津湯』での見張り番など、慌ただしい日々を送っていた。一方江戸では「行田の幾右衛門」一味による残忍な手口の押し込みが頻発していた。その幾右衛門の素性に心当たりを得た六平太は盗賊の捕縛に助力し始めるが……。
(カバー裏の内容紹介より)
本書の冒頭で、六平太は長屋の寝床で寝ているところを、頬被りをした盗人のような者に刃物で襲われました。
枕元に片膝をついた人影が、懐から抜いた匕首らしい刃物を腰だめにした瞬間、六平太は咄嗟に掛け布団を跳ね上げ、ごろごろと畳を転がると、部屋の片隅に立て掛けていた刀を掴んで、一気に引き抜いた。
布団を飛び越して襲い掛かろうとした人影は、六平太が付き出した刀の切っ先にの向こうで動きを止めた。
「誰だおめぇは」(『付添い屋・六平太 妖狐の巻 願掛け女』P.13より)
苦もなく賊を撤退させた六平太ですが、風雲急を告げるような始まりです。
六平太は、付添い屋を務めるかたわら、時折、四谷の相良道場で立見流の修行を続けています。道場で相弟子の、北町奉行所同心の矢島新九郎から先月箱崎町二丁目の鰹節問屋が襲われた押し込みの話を聞きました。
残忍な押し込みの手口は、以前、関東一円で盗みを重ねていた、行田の幾右衛門一党の仕業ではないかということ。
テレビドラマ「鬼平犯科帳」や「剣客商売」、「御家人斬九郎」の脚本家である著者が、「鬼平」を想起させるような盗賊の暗躍と、それを捕縛する者たちをどのように描いていくのか興味深い作品です。
カバーイラスト:村上もとか
カバーデザイン:山田満明
●目次
第一話 幽霊虫
第二話 願掛け女
第三話 押し込み
第四話 疫病神
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『付添い屋・六平太 妖狐の巻 願掛け女』(金子成人・小学館文庫)(第13巻)
『付添い屋・六平太 鵺の巻 逢引き娘』(金子成人・小学館文庫)(第12巻)
『付添い屋・六平太 龍の巻 留め女』(金子成人・小学館文庫)(第1巻)