第162回直木三十五賞(日本文学振興会主催)の選考委員会が2020年1月15日(水)午後4時より築地・新喜楽で開催され、候補作5作品の中から川越宗一さんの『熱源』が受賞作に決まりました。
『熱源』は、樺太を舞台に、明治から大正にかけて激動の時代を生きた、実在の樺太アイヌ山辺安之助(アイヌ名ヤヨマネクフ)の生涯を描いた歴史冒険小説。白瀬矗(しらせのぶ)の南極探検隊に樺太犬の犬ぞり担当として参加した樺太アイヌです。
樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。
一方、ブロニスワフ・ピウスツキは、リトアニアに生まれた。ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。
日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。
文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。
(Amazonの内容紹介より)
第161回の大島真寿美さんの『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』に続き、時代小説作品が直木賞を受賞し、大変喜んでいます。
著者は1978年大阪府生まれ。
2018年に、豊臣秀吉の朝鮮出兵により侵略の風が吹き荒れる東アジアを描いた歴史時代小説『天地に燦たり』で第25回松本清張賞を受賞しています。
直木賞は今回、初めての候補となり、受賞しました。
『天地に燦たり』では、島津の侍、朝鮮の靴職人で儒学を学ぶ青年、琉球の官人という三者の視点から歴史を捉えていました。
本作でもアイヌの山辺安之助、ポーランド人の文化人類学者のブロニスワフ・ピウスツキの二人を中心に壮大なスケールで物語は展開していきます。
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『熱源』(川越宗一・文藝春秋)
『天地に燦たり』(川越宗一・文藝春秋)
『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』(大島真寿美・文藝春秋)