宮本紀子さんの文庫書き下ろし時代小説、『妹の縁談 小間もの丸藤看板姉妹(二)』(時代小説文庫)を入手しました。
おてんば姉・里久と小町娘の妹・桃の姉妹がもり立てる小間物商「丸藤」を舞台にした、繁盛記シリーズの第2弾です。
夏の空が晴れ渡る七月十六日。日本橋伊勢町の大店、小間物商「丸藤」の惣領娘・里久は、藪入りでも里帰りはしないという小僧の長吉につき合って、蔵前の閻魔堂へ参拝に来ていた。どことなく寂しげな長吉を誘い、里久は屋台の天ぷらを堪能するが!? 一方、暦は進んで十月。里久の妹で、伊勢町小町と呼ばれる丸藤の看板娘・桃のもとに、縁談が舞い込む。姉より早い妹の縁談に、両親は戸惑い、想い人のいる桃の胸の内は揺れに揺れて――。日本橋の老舗小間物商をもり立てる姉妹の物語、大好評第二作。
(本書カバー裏の紹介文より)
第1作の『跡とり娘』で、生い立ちも容姿も性格も違いながらも仲の良い「丸藤」の看板姉妹がくり広げる大江戸ガールズ物語にすっかりと魅せられて以来、心待ちにしていた新作です。
夏の、かんっと晴れ渡った空が広がっていた。
朝から陽射しもきつく暑さはじりじりと増している。外ではうるさいほど蝉が鳴いているが、今日に限っては人々の、とくに奉公人たちの耳には届いていまい。
なぜなら今日は七月十六日。奉公人の年に二度ある休みのひとつ、藪入りなのである。
(『妹の縁談 小間もの丸藤看板姉妹(二)』P.6より)
物語はこんな書き出しで始まります。
奉公人の休暇である藪入りでは、里が近い者は家に帰り、親やきょうだいに会い、家が遠い者は連れ立って芝居や見世物見物などに出かけました。
藪入りは時代小説でも時々登場しますが、同じ七月十六日が閻魔の斎日(さいじつ)にもあたり、それと絡めて描かれることはあまりなかったように思います。
日本橋伊勢町の大店、小間物商「丸藤」の惣領娘の里久が、藪入りで小僧の長吉につき合って、一緒に蔵前天王町にある華徳院(けとくいん)の閻魔堂へ参詣に行きます。その帰りに、屋台で天ぷらを食べたことから大騒動に……。
華徳院の閻魔像は、下谷坂本の善養寺、四谷内藤新宿の太宗寺と並び、江戸三大閻魔と呼ばれています。華徳院は関東大震災で焼失し、その後、東京都杉並区松ノ木に移転しました。
本書で姉妹の活躍とともに、江戸の商家の風習や人情、四季折々が楽しめる、繁盛記を楽しみたいと思います。
目次
第一章 藪入り
第二章 里帰り
第三章 びらびら簪
第四章 女友達
第五章 妹の縁談
第六章 味見の茶
第七章 桃の決断
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『跡とり娘 小間もの丸藤看板姉妹』(宮本紀子・時代小説文庫)(第1弾)
『妹の縁談 小間もの丸藤看板姉妹(二)』(宮本紀子・時代小説文庫)(第2弾)