歴史家の安藤優一郎さんから、歴史読み物、『百万都市を俯瞰する 江戸の間取り』(彩図社)を献本いただきました。
著者は、『大江戸の飯と酒と女』(朝日新書)、『江戸の不動産』(文春新書)、『大名屋敷「謎」の生活』(PHP文庫)など、江戸をテーマに執筆、講演活動をされています。江戸のビジネスや武家の生活などに焦点を当て、最新の歴史研究を取り入れた、わかりやすい解説に定評があります。
江戸は五〇〇年以上も前から関東の港湾都市として賑わいを見せていたが、天正18年(1590)に徳川家康が居城に定めたことで、大きく変貌を遂げた。当初は軍事拠点として城の整備が進められ、関ヶ原で徳川家が勝利したのち武家人口・町人人口が急増すると、一大消費地点として発展。ついには世界最大級の百万都市にまで成長し、現代東京の礎が築かれることとなる。
本書では、そんな江戸という巨大城下町を、「間取り」を介して解説していく。具体的には江戸城のほか、武家地、町人地、寺社地、江戸郊外地という五つの土地毎に章を分け、各建物の内部構造や周辺の俯瞰図を見ながら、江戸に住む人々の暮らしに迫っている。(中略)この五つの切り口を通じて、城下町江戸で暮らす武士や町人の生活を、様々な間取り図とともに解き明かしていこう。
(『百万都市を俯瞰する 江戸の間取り』「はじめに」P.2より)
明治二年(1869)に明治政府が行なった土地調査の集計結果によると、江戸(東京)は武家地が約70%を占め、町人が住む町人地と寺社地が同じく約15%ずつを分け合っていたそうです。
本書では、江戸の中心である江戸城の間取りを押さえたうえで、次に約70%の面積を占める武家地の基本を解説していきます。
武家地は、その過半を大名屋敷で占められ、残りを幕臣(旗本や御家人)に下賜された屋敷、そして幕府施設(町奉行所や小石川養生所、馬場、米蔵、材木蔵など)が置かれた地所で構成されていました。
福井藩や長州藩の上屋敷や尾張藩戸山屋敷、吉良上野介の屋敷から、御家人の屋敷まで、その間取り図が掲載されていて解説が加えられています。
捕物小説によく出る南・北町奉行所内を紹介する間取り図が興味深いです。
町人地の間取りでは、表通りを挟んで向かい合う区画(各々六十間×二十間)で一つの町(両側町)とする、江戸の町割りの基本パターンを理解します。
表店と裏長屋の俯瞰図を見ると、長屋を舞台にした市井人情小説の住居空間がイメージしやすくなります。
間取りを見ていくうちに、江戸がグンと身近に感じられます。
目次
はじめに
総説 百万都市江戸の基本
第一章 江戸城の間取り
第二章 武家地の間取り
第三章 町人地の間取り
第四章 寺社地の間取り
第五章 江戸郊外地の間取り
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『百万都市を俯瞰する 江戸の間取り』(安藤優一郎・彩図社)