週末を利用して、奈良と京都を訪れました。
今回の楽しみの一つは、学生時代以来の奈良への日帰り旅行。
東大寺の大仏、興福寺の阿修羅像、そして奈良公園の鹿たち……修学旅行の思い出の追体験といったテーマがありました。
東大寺では、大きさに圧倒されました。盧舎那仏像(大仏)と大仏殿、そして南大門の金剛力士像。コンピューターも重機も電動工具もない時代に、巨大な建造物を造る困難さはいかほどだったことでしょうか。
澤田瞳子さんの大仏造営事業に携わる人々を描いた『与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記』を想起しました。
山を背後にせり出すように建てられた懸造の二月堂に上がり、静寂な中でお参りをいたしました。二月堂は、旧暦2月「お水取り(修二会)」の時を除いていつでも無料で参拝可能だそうです。
その後、若草山を左手に見ながら、春日大社に向かいました。
春日大社は768年に創設され、全国の春日神社の総本社で、藤原氏の氏神として知られています。
春日大社の祭神は武甕槌命(タケミカヅチノミコト)で、茨城県にある鹿島神社から鹿に乗ってってやってきたと伝えられています。そのため、鹿は神の使いとして古くから大切にされてきました。
奈良公園ばかりでなく東大寺、春日大社、興福寺の周辺などに、多数の野生の鹿が暮らしています。無防備に近づいて触れ合うのは危険なこともありますが、鹿たちを少しだけ離れて観察していると、その愛らしい姿に癒されます。
仏像ファンばかりでなく、多くの人に愛される阿修羅像は、興福寺にあります。
その仏像の面影になぞらえて、光明皇后、藤原仲麻呂らの専制を憎み、打倒藤原氏に起ち上がった橘奈良麻呂を描いた時代小説が、梓澤要さんの『阿修羅』です。
興福寺の国宝館は、国宝40点が展示されています。
歴史博物館の特別展でも、これだけの国宝を集めるのが難しいのではないかと思われるほどの充実ぶりです。これを見れただけでも奈良を訪れる価値はありました。
阿修羅像をはじめとした八部衆立像、十大弟子立像、5メートルを超える千手観音菩薩立像、ユーモラスな板彫十二神将像、空海が文を構想して三筆の橘逸勢の筆と伝えられる銅製の燈籠火袋羽目板と、怒涛の国宝の展示の数々に圧倒され、本物が持つ美しさ、その保存状態の良さに大きな感動を覚えました。
後で知ったことですが、国内にある国宝仏像彫刻の「17%」が興福寺にあるそうです。
平安末期の平家による南都焼討と興福寺の僧を描いた、澤田瞳子さんの長編時代小説『龍華記』が売店に置かれていました。
学生時代以来で、ボケボケとなっていた修学旅行の記憶がよみがえり、新たなる発見とともに、苦手としていた奈良を描いた歴史時代小説がぐっと身近に感じられるようになりました。
■Amazon.co.jp
『与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記』(澤田瞳子・光文社文庫)
『阿修羅』Kindle版(梓澤要・新人物文庫)
『龍華記』(澤田瞳子・KADOKAWA)