2019年12月21日から12月31日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2019年12月の新刊 下」を掲載しました。
今回は、新潮文庫から刊行される、梓澤要さんの奈良時代の男女を描く、連作短編小説集、『万葉恋づくし』を紹介します。
初春の令月にして 気淑く風和ぎ
梅は鏡前(きょうぜん)の粉を披き 蘭は珮後(はいご)の香を薫らす
(『万葉集』梅花の歌三十二首の序文より)
令和になって、最初の年末年始を迎える今、その出典となった万葉集の世界に浸るのも悪くないなあと思っています。
我知らず、恋の奴(やっこ)―奴隷―になってしまった万葉の名歌に秘められたドラマ。いつかは都へ帰る人――。赴任先の現地妻を自認していた遊行女婦が、かりそめの恋の終わりに流した涙。若き日の穂積皇子と異母妹・但馬皇女との伝説の許されざる恋。そして万葉集の編纂者・大伴家持が自らうたった、ひと回り以上年上の紀女郎への募る思い。身も心も焦がす恋を描く連作短編小説集。
(単行本版のAmazon内容紹介「BOOK」データベースより)
『万葉集』というと昔過ぎて、馴染みが薄くてとっつきにくい感じがしていましたが、本書で少し身近になれたらと思います。
大伴家持は、万葉集の編纂に関わる歌人です。
令和の由来となった「梅花の歌」は家持の父・大伴旅人の邸宅で催された梅花を見る宴で詠まれたものだそうです。
著者の初期の作品に、遣唐使の時代の日唐交流の秘話とロマンを描き、第18回歴史文学賞(1993年度)を受賞した『喜娘』があります。
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『万葉恋づくし』(梓澤要・新潮文庫)
『喜娘 (きじょう)』 Kindle版(梓澤要・新人物文庫)
梓澤要|時代小説ガイド
梓澤要|あずさわかなめ|時代小説・作家 1953年、静岡県生まれ。明治大学文学部卒業。 1993年、『喜娘』で第18回歴史文学賞受賞。 2017年、『荒仏師 運慶』で第23回中山義秀文学賞を受賞。 ■時代小説SHOW 投稿記事 「2016年...