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義に殉じた男たち、そして女たち。忠臣蔵小説が恋しくなる

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森家の討ち入り諸田玲子さんの時代小説、『森家の討ち入り』(講談社文庫)を入手しました。

歳を重ねてきたせいか師走に入ると、「忠臣蔵」が気になり、赤穂浪士の吉良邸討ち入り事件を描いた時代小説が無性に読みたくなります。

津山森家の改易後、備中国西江原森家の当主となった長直に、弟・式部衆利から文が届く。そこには、吉良邸に討ち入った赤穂四十七人に、森家に縁のある三人の浪士がいると記されていた。彼らはかつて式部のもとで、御犬小屋の築造に従事していた。信念を貫き気高く生きた男女の姿が胸を打つ、新たな忠臣蔵の傑作。
(カバー裏の紹介文より)

本書では、赤穂四十七士の中では脇役的な存在である、神崎与五郎、茅野和助、横川勘平の三人にスポットライトを当てて描かれています。

三人は津山藩森家十八万石にゆかりの者でした。元禄十年(1697)に津山藩が改易後、赤穂浅野家に仕官した三人は、新参の身ながらも命を賭して吉良邸への討ち入りに加わりました。

「はぁ、して、式部さまはなんと」
「四十七士の中に森家の旧臣がおるらしい、その者らのことを詳しゅう知りたい、調べてもらえぬかといってきた」
 又右衛門はしゃっくりをした。同時に両手を泳がせたのは、ただおどろいただけでなく、禍に怯え、とっさにふりはらおうとしたのだろう。
「まさか、さようなことが……だといたしましても、無用な詮索はなさらぬほうがよろしゅうございます」
(『森家の討ち入り』P.12より)

元禄十六年正月、備中国西江原森家二万石の当主長直のもとに、謹慎中の弟、式部衆利からの手紙を家老の可児又右衛門が取り次ぎます。

式部は、長直の末弟で、津山森家の家老となり、一時期は江戸郊外中野村の御囲(十数万坪に及ぶ御犬小屋)築造に総奉行として携わりました。その後、当主であった甥の死去にともなって宗家の養嗣子になったもの、家督を継ぐべく江戸へ向かう途中で発病し、津山森家の改易の元凶となった悲劇の人物です。

本書では、義に殉じた男たち、そして夫や恋人を支えて強く生きた女たちの思いを描いていきます。

著者には、赤穂浪士と恋仲となる奥女中の目線から、忠臣蔵を描いた傑作時代小説『四十八人目の忠臣』があります。同作品は、2016年にテレビドラマ化されて、NHK土曜時代劇「忠臣蔵の恋~四十八人目の忠臣」として放送されています。

また、『犬吉』では、中野村の御囲が作品の舞台として描かれています。

●目次
長直の饅頭
与五郎の妻
和助の恋
里和と勘平
お道の塩
あとがき

■Amazon.co.jp
『森家の討ち入り』 (諸田玲子・講談社文庫)
『四十八人目の忠臣』 (諸田玲子・集英社文庫)
『犬吉』 (諸田玲子・文春文庫)

諸田玲子|時代小説ガイド
諸田玲子|もろたれいこ|時代小説・作家 静岡県生まれ。上智大学文学部英文科卒。外資系企業を経て、翻訳・作家活動に入る。 1996年、『眩惑』でデビュー。 2003年、『其の一日』で第24回吉川英治文学新人賞受賞。 2007年、『奸婦にあらず...