文芸評論家の末國善己さんのセレクションによる時代小説アンソロジー、『動乱! 江戸城』(実業之日本社文庫)を入手しました。
発行は2019年8月で、即位の礼で注目を集める江戸城周辺を舞台にした、歴史・時代小説の傑作選です。時代小説の目利きである編者による、実業之日本社文庫のオリジナル。
将軍の居城としてそびえた江戸城。泰平の世といわれた江戸二百五十年の間にも、明暦の大火から大奥の密通事件、桜田門外の変など城内外で天下を揺るがす事件が起きていた。大久保忠隣、保科正之、田沼意知らをはじめとした、時代の宿命を背負いながら困難に立ち向かった人々の生きざまとは。超豪華作家陣が描く、傑作歴史・時代小説集!
(カバー裏の紹介文より)
本書に収録された短編は、徳川家康を武勇で支えた大久保一族と謀略を得意とした本多正信・正純父子の対立を描いた「梅、一輪」(火坂雅志)から、井伊直弼の護衛でありながら桜田門外の変で主君を殺された男のその後を描く「柘榴坂の仇討」(浅田次郎)まで、時系列に並べられています。
政治の中心である江戸城を舞台にした事件と人物の物語を通して読むと、江戸時代のありようが浮かび上がってきます。
五代将軍綱吉の時代の勘定奉行荻原重秀が拝領屋敷を追われる最後の一日を描く「立つ鳥」(諸田玲子)は、重秀の死の謎を追った長編小説『闇の峠』へ続いていきます。
歴史小説が多い中で、四代将軍家綱の後継を巡る争いを描いた、山田風太郎さんの伝奇小説「忍法肉太鼓」も収録されていて、面白いアクセントになっています。
●目次
梅、一輪 火坂雅志
名君と振袖火事 中村彰彦
立つ鳥 諸田玲子
世直し大明神 安部龍太郎
ある寺社奉行の死 松本清張
藤尾の局 宇江佐真理
柘榴坂の仇討 浅田次郎
編者解説 末國善己
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『動乱! 江戸城』 (末國善己編・実業之日本社文庫)