2020年大河ドラマ「麒麟がくる」で、斎藤道三の娘、帰蝶(濃姫)(後の織田信長の正妻)役を演じるはずの女優が麻薬取締法違反容疑で逮捕されてしまいました。ドラマで重要な役割を演じることが期待されていただけに残念です。
さて、2019年10月に刊行された、明智光秀が登場する、時代小説アンソロジー、『傑作! 巨匠たちが描いた小説・明智光秀』(宝島社文庫)の解題を担当して以来、明智光秀に関連した作品を読む機会が増えています。
同書には、池波正太郎さんの短編小説「鬼火」が収録されています。
信長に仕える主の命で、明智家に潜入していた甲賀忍びが、光秀の謀叛を事前に察知できず、本能寺の変を伝えることができない失態を犯します。屈辱を晴らすために、光秀が毛利家に派遣した伊賀忍びを途中で襲って密書の強奪をはかるというシーンが描かれています。
実は、これと同じシチュエーションが、池波さんの長編時代小説の『新装版 忍びの風 (3)』(文春文庫)でも、甲賀忍びの名を井笠半四郎に変えて描かれています。
『忍びの風』は、若き甲賀忍び・井笠半四郎が、信長のよる小谷城攻めから長篠の戦い、本能寺の変、山崎の戦いまで、天下動乱の中での忍び働きと、女忍びの於蝶との愛を描いた傑作戦国時代小説です。
明智光秀も、信長や秀吉とともに、重要な脇役の一人として物語に登場します。
『光秀 歴史小説傑作選』(PHP文芸文庫)に収録されている歴史読み物「一代の栄光――明智光秀」には、池波さんが松竹映画「敵は本能寺にあり」のシナリオを描いた際の興味深いエピソードが紹介されています。
亡くなった大曾根辰保監督が松本幸四郎(注:八代目)の光秀で撮った映画だったが、このときも、光秀の老母を出すか出さぬかで、いろいろもめたが、芝居としてはおいしいところなのだし、どうも光秀同情のテーマでやることだし、
「やっぱり、おふくろを出そうや」
ということになった。
(『光秀 歴史小説傑作選』「一代の栄光――明智光秀」P.84より)
また、「一代の栄光――明智光秀」では、光秀の首についても言及しています。光秀生存説をテーマに、短編小説「首」(『忍者群像』に収録)を描いています。
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『傑作! 巨匠たちが描いた小説・明智光秀』(吉川英治、池波正太郎、山田風太郎、柴田錬三郎、他・宝島社文庫)
『光秀 歴史小説傑作選』(冲方丁、池波正太郎、山田風太郎、他・PHP文芸文庫)
『新装版 忍者群像』(池波正太郎・文春文庫)
『新装版 忍びの風 (1)』(池波正太郎・文春文庫)
『新装版 忍びの風 (2)』(池波正太郎・文春文庫)
『新装版 忍びの風 (3)』(池波正太郎・文春文庫)