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生きとし生けるものの命を大切にした、将軍綱吉の覚悟

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最悪の将軍2019年10月31日の未明に起こった、沖縄の首里城焼失に大きなショックを受けました。

首里城は、1879年の明治政府によって日本の政治体制に組み入れらた「琉球処分」まで、400年以上にわたり、琉球王国の政治の中心でした。太平洋戦争によって焼失し、その後30年をかけて復元されました。

首里城といえば、十九世紀の琉球王朝を描いた、池上栄一さんの時代小説『テンペスト』が思い出されます。

首里城が復元され、沖縄のみなさんにまた笑顔が戻ることを願っています。

さて、朝井まかてさんの長編時代小説、『最悪の将軍』(集英社文庫)を入手しました。

生類憐みの令によって「犬公方」の悪名が今に語り継がれる五代将軍・徳川綱吉。その真の人間像、将軍夫妻の覚悟と煩悶に迫る。民を「政の本」とし、泰平の世を実現せんと改革を断行。抵抗勢力を一掃、生きとし生けるものの命を尊重せよと天下に号令するも、諸藩の紛争に赤穂浪士の討ち入り、大地震と困難が押し寄せ、そして富士山が噴火――。歴史上の人物を鮮烈に描いた、瞠目の歴史長編小説。
(文庫カバー裏の紹介文より)

五代将軍徳川綱吉は、多くの時代小説や時代劇によって、その悪名ぶりが語り継がれています。

歴史学者・山室恭子さんの読み物『黄門さまと犬公方』を読んで以来、綱吉の真の姿は我々のもつイメージと違うのかもと思っていました。

 再び名を呼ばれたような気がして、兄の口許に耳を近づけた。
「強き将軍に成りて、天下を束ねよ」
 驚くほど明晰な言だった。胸が大きくうねるように動く。医者を呼ぼうとして顔を上げると、家綱はまた言葉を継いだ。
「泰平の世を」
 光を灯すような声だった。

(『最悪の将軍』P.45より)

本書には、死の床にある、兄であり四代将軍の家綱と綱吉の対面シーンが描かれています。綱吉が将軍として目指すものが示されています。

綱吉は、治世の初期で「天和(てんな)・貞享の治」と呼ばれる改革を行い、勘定奉行に荻原重秀を起用して、財政基盤を確立した功績があります。
赤穂浪士の討ち入り事件や富士山噴火などが起こり、生類憐みの令も意図したものと違う展開をしたようで、後期はグダグダになってしまった感があり残念。

本書で、綱吉の真の姿に出会えるのが楽しみです。

目次
一 将軍の弟
二 玉の輿
三 武装解除せよ
四 萬歳楽
五 生類を憐れむべし
六 扶桑の君主
七 犬公方
八 我に邪無し
解説 中嶋隆

■Amazon.co.jp
『最悪の将軍』(朝井まかて・集英社文庫)
『テンペスト 第一巻 春雷』(池上栄一・角川文庫)
『黄門さまと犬公方』(山室恭子・文春新書)

朝井まかて|時代小説ガイド
朝井まかて|あさいまかて|時代小説・作家 1959年、大阪府生まれ。甲南女子大学文学部卒業。 2008年、『実さえ花さえ』(のちに『花競べ 向嶋なずな屋繁盛記』と改題)で第3回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞してデビュー。 2014年、『恋歌...