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新解釈の本能寺の変。森蘭丸を描くピカレスク小説

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天魔乱丸ハヤカワ時代ミステリ文庫の創刊第2弾、大塚卓嗣(おおつかたくじ)さんの長編歴史時代小説、『天魔乱丸』(ハヤカワ時代ミステリ文庫)を入手しました。

著者は、『天衝 水野勝成伝』『宮本伊織』『くるい咲き 越前狂乱』など、戦国時代の個性的な武将を描いた歴史長編で活躍する、新進気鋭の時代小説家です。

炎と煙が払暁の空を赤黒く染め、本能寺を焼く。天下人・信長を討たんと光秀の刺客どもが刃を振るう地獄で、森蘭丸は独り護る、信長の首を。だが追手から逃れようとしたその時、炎が身体を呑み込んだ。目覚めると――右半身は美貌のまま、左半身が醜く焼け爛れていた。ここで果てるわけにはいかぬ。蘭丸は光秀側の安田作兵衛を抱き込み、ある計略を成し遂げんと……復讐に燃え盛る美青年の計略の行方。激しき戦国悪漢小説。
(文庫カバー裏の紹介文より)

本書は、天正十年六月二日の払暁、四条西洞院から始まります。すなわち、本能寺が明智光秀の軍勢に襲われて、炎上しているシーンで始まります。

 生き残ること。
 これこそが、今の森蘭丸のすべてであった。
 蘭丸の腰には、主君・織田信長の首がある。これは先ほど、蘭丸自身が斬り落としたものであった。
〈絶対に、渡すわけにはいかない〉
(文庫カバー裏の紹介文より)

燃え盛る炎の中、信長の首を携えた小姓頭・森蘭丸は、信長の首を狙う、明智軍の渡り奉公人古川九兵衛、箕浦新左衛門、安田作兵衛と激闘の末、逃げ場を求めて土蔵の扉を開けてしまいました。バックドラフト現象による大爆発で、近距離で摂氏一〇〇〇度の炎を浴び意識を失い、意識が戻ると、半分は美貌、半分はやけどにより醜貌に……。

やけどにより凄みを加えた蘭丸(乱丸)が何とも魅力的で、ストーリーに引き込まれていきます。遠田志帆さんのカバーイラストもイマジネーションをかき立て、魅力的です。
さまざまな史料や参考文献をもとにした、本能寺の変の真相と明智光秀像の新解釈も楽しみな戦国時代小説の登場です。

目次
本能寺炎上
第一章 天魔波旬
第二章 天歩艱難
第三章 天資刻薄
第四章 天華乱墜
二十一年後 六月二日 唐津

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『天魔乱丸』(大塚卓嗣・ハヤカワ時代ミステリ文庫)