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道場を継ぐと決意した息子の成長を描く、「新・軍鶏侍」第3作

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羽化 新・軍鶏侍野口卓さんの文庫書き下ろし時代小説、『羽化(うか) 新・軍鶏侍』(祥伝社文庫)を入手しました。

南国の藩・園瀬(架空の地)が作品の舞台。剣術道場を営むかたわら、その動きの美しさに魅せられて軍鶏を飼育する「軍鶏侍」こと、岩倉源太夫とその家族や師弟を中心に繰り広げられる、ファミリー時代小説シリーズの第3弾です。

兄龍彦が長崎に留学し、甥の佐一郎や新弟子の伸吉が頭角を現す岩倉道場で、源太夫の実子幸司は二代目を継ぐ決意をする。しかし、幸司には悩みがあった。それは、偉大な剣客である父の秘剣「蹴殺し」を未だその目で見ていないこと。悩める幸司は父の一番弟子を訪ねるが……(「羽化」)。園瀬の里に移ろう時と、受け継がれる教え。それぞれの成長を描く豊穣の四編。
(Amazonの紹介文より)

全シリーズの「軍鶏侍」では、園瀬藩の政争に巻き込まれたり、剣名を上げようと果し合いを求める剣客を秘剣「蹴殺し」を使って倒したりする、源太夫の剣客ヒーローぶりに、ワクワクさせられます。

この「新:軍鶏侍」シリーズでは、道場主として、また、子をもつ親として、弟子たちや子供たちの成長を温かく見守る、人生の師としての源太夫が魅力です。一種の教育小説であり、弟子や子供たちから見れば青春小説でもあります。

「わずかなあいだに、いや、一晩でかもしれんが、別人のようになったな」
「変なことを言わないでくださいよ。蝉や蜻蛉ではないですから、急に変われる訳がないでしょう」
「まさにその蝉か蜻蛉、でなければ蝶だな。地中から出て来た不格好な虫が、木の幹をよじ登り、殻から抜け出して蝉になる。水中の泥を這い廻っていたヤゴが、水草の茎を登って、あっと言う間に蜻蛉になるだろう。なにかの塊としか思えん蛹の背が割れて、きれいな蝶が出てきたと思うと、やがて青空に飛び立つ。いや、幸司は飛び立った」
(『羽化 新・軍鶏侍』P.57より)

本書のタイトルとなった「羽化」という話では、源太夫の息子幸司の急成長を羽化に例えて説明している。青少年期に一度あるかないかのできごとを虫の成長になぞられて描写しています。

いくつになっても、若い頃の物語には胸をときめかす魔力があります。本書はそんな魔力に触れられる作品です。

★目次
羽化
兄妹
異界
ひこばえ

「軍鶏道場」のもう一人の師・権助、逝く。涙が抑えられず
野口卓さんの『羽化(うか) 新・軍鶏侍』(祥伝社文庫)を読了しました。 南国の藩・園瀬(架空の地)を舞台に、剣術道場を営むかたわら、軍鶏を飼育する「軍鶏侍」こと、岩倉源太夫がその家族や師弟を中心に繰り広げられる、ファミリー時代小説シリーズの...

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『師弟 新・軍鶏侍』(野口卓・祥伝社文庫)(第1作)
『家族 新・軍鶏侍』(野口卓・祥伝社文庫)(第2作)
『羽化 新・軍鶏侍』(野口卓・祥伝社文庫)(第3作)