2019年9月1日から9月10日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2019年9月の新刊 上」を掲載しました。
今回は小学館文庫から刊行される、飯嶋和一さんの長編時代小説、『狗賓童子の島(ぐひんどうじのしま)』を紹介します。
著者は、本作品で第19回(2015年度)司馬遼太郎賞を受賞しています。
弘化三年(一八四六)、日本海に浮かぶ隠岐「島後」に、はるばる大坂から流された一人の少年がいた。西村常太郎、十五歳。大塩平八郎の挙兵に連座した父・履三郎の罪により、数え六つの年から九年に及ぶ親類預けの果ての「処罰」だった。ところが案に相違して、大塩の乱に連座した父の名を、島の人々が敬意を込めて呼ぶのを常太郎は聞いた。
翌年、十六歳になった常太郎は、狗賓が宿るという「御山」の千年杉へ初穂を捧げる役を、島の人々から命じられる。下界から見える大満寺山の先に「御山」はあったが、そこは狗賓に許された者しか踏み入ることができない聖域だった。やがて常太郎は医術を学び、島に医師として深く根を下ろすが、災禍に痛めつけられ、怒りに染まっていく島民らの姿を目の当たりにする。
(Amazonの内容紹介より)
大塩平八郎の乱に連座して、隠岐の島に流された少年、西村常太郎の波乱に満ちた半生を描いた長編歴史小説です。幕末から維新にかけて激動の波にさらされる島を舞台に、後に「隠岐騒動」(明治元年)とも呼ばれた島民の自治獲得の闘いを描いています。
歴史を通して現在が透徹できる、文学としての歴史時代小説を読む醍醐味が堪能できる作品です。
■Amazon.co.jp
『狗賓童子の島』(飯嶋和一・小学館文庫)