今村翔吾さんの文庫書き下ろし時代小説、『冬晴れの花嫁 くらまし屋稼業』(時代小説文庫)を入手しました。
本書は、金さえ積めば、この世の今の暮らしからくらましたい人を助ける、「くらまし屋稼業」シリーズ第5弾です。毎回、奇想天外な方法で依頼人からの「晦まして欲しい」という願いにこたえます。
「一日だけ、儂を晦まして欲しい」――飴売りの仕事を終え、日本橋の波積屋で鮃の昆布締めと肝を肴に一杯やっていた平九郎の元に、口入屋の坊次郎が訪ねてきた。幕府御庭番曽和一鉄という男が、くらまし屋に仕事を依頼したいと話を持ちこんできたという。なんと依頼主は、老中松平武元――。虚、御庭番、道中奉行……次々とすご腕の遣い手が現れる中、くらまし屋は、殿さまの命をかけた想いをかなえることができるな!?
(本書カバー裏の紹介文より)
今回の依頼人は、幕府老中の松平武元(たけちか)。上野館林藩藩主で、延享四年(1747)に老中になっている。老中首座には明和元年(1764)に就き、安永八年(1779)に死去するまで15年間務めた、幕閣の中心人物です。
「その晦ましたい相手とは……?」
「儂よ」
一鉄は絶句した。老中が忽然と消えるなど、驚天動地の大騒動になってしまう。
「たった一日だけ姿を晦ましたいのだ」
(『冬晴れの花嫁 くらまし屋稼業』P.40より)
武元は、御庭番の曽和一鉄を呼び、私的なことだから御庭番は使えないから、くらまし屋に仕事を頼めないか、その手引きだけをしてくれないかと相談します。武元は何のために一日姿を晦ましたいのか、大いに気になるところです。
本書は、この本から読み始めても十分楽しめますが、第三弾の『夏の戻り船』と第四弾の『秋暮の五人』のくらまし屋の仕事の顛末の後日談も絡まってきてファンにはうれしいところ。次々に剣の遣い手が登場し、ジェットコースターのようなスピード感で物語が展開していく疾走感が魅力です。
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『冬晴れの花嫁 くらまし屋稼業』(今村翔吾・時代小説文庫)(第5弾)
『秋暮の五人 くらまし屋稼業』(今村翔吾・時代小説文庫)(第4弾)
『夏の戻り船 くらまし屋稼業』(今村翔吾・時代小説文庫)(第3弾)