2019年7月1日から7月10日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2019年7月の新刊 上」を掲載しました。
今回は徳間文庫から刊行される、志川節子(しがわせつこ)さんの『煌(きらり)』をとり上げます。本書は、『春はそこまで 風待ち小路の人々』で第148回直木賞候補となった著者の短編小説作品集です。
「祝言は挙げられない」簪職人のおりよは、突然許婚の新之助にそう告げられた。理由はなんとなく思い当たる。新之助は形がよく、おりよは目が見えないから。二人で歩いていると耳の後ろが熱くなる。女たちの視線が痛い。どうして私だけこんなことに――。悔しさを押し殺し、手に残る感覚を頼りに仕事に没頭するおりよだったが……(「闇に咲く」)。
遊女、船問屋、紙問屋、簪職人、花火師、旅籠屋……市井の人情を掬い取る、珠玉の時代小説。
(Amazonの内容紹介より)
以下、単行本読了時に記した感想です。
吉田(東海道)、市川大門(甲斐国)、長崎、江戸、長岡などの地を舞台に、花火をモチーフにした短編集。人情と人生模様を、花火の音と光になぞらえて描き、その情景描写の美しさ、余韻が胸に残ります。
花火の季節がやってくると、読みたくなる時代小説です。
■Amazon.co.jp
『煌(きらり)』(志川節子・徳間文庫)