福原俊彦名義で時代小説家として活躍するかたわら、歴史解説書や評論などを手掛ける、榎本秋さんの歴史読み物、『日本坊主列伝』(徳間文庫)を入手しました。
本書は、古代から近世までを、「1 古代~鎌倉」、「2 室町~戦国」、「3 江戸」の3つに分けて、歴史に名を残した34人の坊主(僧侶)の生涯と、彼らにまつわる伝説やエピソードを紹介しています。
仏教が日本に伝来して、千四百年あまり。坊主は、ただ仏の教えを広め、修行・精進しているだけじゃなかった! 天皇や貴族の側近くに仕え、名だたる猛将・知将の教育係や御意見番、戦の参謀を務め、ときには自ら戦場に出るなど、歴史の表と裏で活躍・暗躍していたのだった。名僧、奇僧、怪僧、悪僧たちの実像を知れば、歴史小説や時代小説が、さらに面白くなる。
(本書カバー裏の紹介文より)
本書の面白さは、坊主(僧侶)という視点から歴史の流れをとらえていること、そしてその人選にあります。
道鏡や空海、日蓮、蓮如、安国寺恵瓊、南光坊天海、隆光といった政治上また宗教上で重要な役割を演じた坊主をはじめ、兼好法師、一休宗純、雪舟等楊、本因坊算砂、林羅山など思想や文化面で活躍した坊主も紹介しています。
異色なところでは、安倍晴明のライバル・蘆屋道満、鉄鼠になった僧侶頼豪、司馬遼太郎さんの短編時代小説で知られる果心居士、柳生十兵衛の弟・烈堂義仙など、物語の世界で意外な活躍をする坊主たち。
坊主の世界に誘われ、百人一首の「坊主めくり」の遊びを思い出しました。
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『日本坊主列伝』(榎本秋・徳間文庫)
『果心居士の幻術』(司馬遼太郎・新潮文庫)