岡本さとるさんの文庫書き下ろし時代小説、『父の海 若鷹武芸帖』(光文社文庫)を入手しました。
本書は、将軍家斉から「滅びゆく武芸流派を調べよ」と、公儀武芸帖編纂所の頭取に命じられた若き旗本、新宮鷹之介が、癖のある武芸者たちに支えられて、命を果たしていく武芸小説の第四弾です。
「どうじゃな。水術などに目を向けてみては」。公儀武芸帖編纂所頭取の新宮鷹之介は支配役の若年寄・京極周防守に呼び出される。提案されたのは、なんと水術。数多の武芸に通暁する鷹之介も、この水術だけは……。とはいえ、調べを進めた鷹之介だったが、その前に暗雲が立ち込める。そして、新たに下された命とは――。
(本書カバー裏の紹介文より)
「まさか、武芸帖編纂所頭取であるこの身が、泳げないではすまされぬ……」。
鏡心明智流の遣い手で武芸百般に通じている鷹之介でしたが、実は泳ぎができませんでした。
子供の頃、父に連れられて水術の稽古に励んだことがありましたが、船に乗せられて沖に出て海に放り込まれたときに、気が動転して水を呑み込んで溺れて死にそうになりました。以来、溺れかけた時の恐怖が心と体に沁みついて、二十六歳になるまで、武芸の中でも大事な水術を、まったく体得せぬままでした。
鷹之介は、連日水術の達人捜しと称して外出を続けましたが、その行先は芝の海岸でした。岩と木に視界を遮られて人目につかない狭い砂浜で、人知れず、水に慣れる鍛錬をはじめました……。
そして鷹之介に水術を教えることになる、意外な師匠が登場します。
暑い季節に涼を届ける、気分が爽快になる物語の始まりです。
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『父の海 若鷹武芸帖』(岡本さとる・光文社文庫)(第四弾)
『若鷹武芸帖』(岡本さとる・光文社文庫)(第一弾)