講談社創業90周年を記念して、2000年に設立された野間記念館では、初代社長野間清治氏の収集した横山大観ら近代本画家の作品群、講談社の前身時代からの出版文化資料、時代小説の挿絵で活躍されている巨匠・村上豊さんの原画群、といった3つタイプの展示品が時期によって企画展として公開されます。
訪れた日は「村上豊の絵画の世界展」の前期展示の最終日にあたり、「夢幻」をテーマに多数の作品が展示されていました。散りゆく桜の花びらが夢のように美しく、近くを流れる神田川に花筏を作っていました。
御年82歳の村上さんは、1963年の創刊以来、半世紀以上にわたり雑誌「小説現代」の表紙原画を描いて来られた、講談社と縁の深い画家です。
郷愁を誘う情景、夢幻の境地に遊ぶ情趣、人々の営みへ注がれる優しいまなざし、肉感的な女性像、独特な筆致で、長年にわたって多くの時代小説の挿絵や表紙装画を手掛けられています。
今回の展示では、夢枕獏さんの「陰陽師」シリーズ(文春文庫)から『首』『鉄輪』などの挿絵と表紙装画がありました。
個人的には、村上豊さんというと、ユーモア時代小説や新潮文庫の池波正太郎作品の装画のイメージがあります。また、講談社では宮部みゆきさんの『ぼんくら』が思い出されます。
2019年4月19日(金)からは、全作品を入れ替えた後期の展示が始まるので、時間を作って再訪したいと思います。
記念館に隣接された、野菜倶楽部「oto no ha Cafe」での取れたて野菜をふんだんに使ったランチもおすすめです。
なお、「小説現代」は2018年10月号で休刊し、2020年3月号よりリニューアル創刊されるそうです。1年半かけて、どのような雑誌に生まれ変わるのか楽しみです。
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『陰陽師 首』(夢枕獏・文春文庫)
『谷中・首ふり坂』(池波正太郎・新潮文庫)
『ぼんくら(上)』(宮部みゆき・講談社文庫)