2019年4月1日から4月10日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2019年4月の新刊 上」を掲載しました。
今回は小学館文庫から刊行される、和田はつ子さんの文庫書き下ろし時代小説、『口中医桂助事件帖 さくら坂の未来へ』に注目しています。
江戸の歯医者さん、口中医をつとめる桂助を主人公にした、人気シリーズの第16作です。2005年10月に第1作『南天うさぎ』でスタートした人気シリーズも、いよいよ本作をもって完結です。
横浜の居留地で虫歯の治療に行くという妹のお房の話を聞き、桂助と鋼次も同行していった。そこでウエストレーキの治療を目の当たりにする。エーテル麻酔を使って痛みのないようにし、機械で穴の深い虫歯を取り除いていった。歯を抜かずに残す最新の技術を初めて目にした桂助は、感無量だった。
染井の四季楽亭には志保らしき女性を見つけられず、心中を装って同心の友田達之助と亡くなっていた女性も、志保ではなかった。
友田が阿片の密売の大本に迫っていたことを知り、桂助はその真相に迫っていく。元御側用人の岸田正二郎や父の長右衛門とともに真相が明かされたとき、藤屋が幕府の重大な役割を果たしていたことも判明した。そして、志保とも無事再会した。
(Amazonの紹介文より)
将軍家の後継問題など、幕閣の暗闘にも巻き込まれ、さまざまな困難な事件に遭遇しながらも、江戸を代表する名歯医者として、庶民の歯の治療にまい進する姿が感動的です。当時は抜歯が根本的な虫歯治療だったために、歯を無くしてしまう人を救えないことに無力感も味わいます。
江戸後期の歯科事情もわかって興味深いシリーズで、完結してしまうのは残念ですが、ファンとしてはどのような物語の結末が用意されているのか、楽しみでもあります。
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『口中医桂助事件帖 さくら坂の未来へ』(和田はつ子・小学館文庫)