千野隆司(ちのたかし)さんの文庫書き下ろし時代小説、『おれは一万石 囲米の罠(かこいまいのわな)』(双葉文庫)を入手しました。
下総高岡藩1万石の井上家の世子となった、正紀の奮闘を描く、人気シリーズの第八弾です。前作『定信の触』に続いて、江戸廻米をめぐる高岡藩の危機を描いています。
血と汗を流して江戸への廻米を果たしたものの、米価高騰は続いている。その理由は廻米がさらなる値上げを狙って隠匿されてしまったからだ。この囲米をしているのが、こともあろうか、老中のひとりだとの疑いが濃くなった。廻米に尽力した家臣の死に報いるためにも、囲米は断じて許せない。一万石が老中に闘いを挑む!
(本書カバー裏の紹介文より)
米価を下げる目的で、老中松平定信により、東北や関八州の諸藩に、江戸への廻米を命じられました。一揆のあった高岡藩と常陸府中藩には、他の藩と比べて倍の量を用意するように告げられました。
高岡藩は、藩士たちの命がけの働きの末に何とか廻米を果たしましたが、米は店頭に並ばず米価は下がらず、施策はうまくいっていません。
廻米を買い入れた米商いの者が、品薄で高値になることを狙って、囲米(かこいまい)として隠しているからでした。
昨年、幕府の発した米穀売買勝手令より、米の荷受け・売買を問屋や仲買いに限らず米穀商人以外の者にも許したことにより、誰でも売買が可能になり、米を扱う者が増えすぎて誰がどれほど仕入れて売っているかがわかりづらくなっているのも原因でした。
北町奉行所の高積廻り与力の山野辺蔵之助や脇両替商の房太郎の協力を得て、高岡藩では、藩士の植村仁助や青山太平らがこの不正の動きを探ります。不正の裏に老中の影が、そして、巧妙に張り巡らされた罠が、正紀の高岡藩にまたしても一万石存亡の危機が……。
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『おれは一万石 囲米の罠』(千野隆司・双葉文庫)
『おれは一万石 定信の触』(千野隆司・双葉文庫)