先日、京王井の頭線駒場東大前駅から徒歩8分にある駒場公園内にある、旧前田家本邸を見学してきました。
旧前田家本邸は、旧加賀藩主前田家16代当主の侯爵前田利為(としなり)侯の居宅で、昭和三年(1928)に建設されたもの。
家族の生活の場であり迎賓館としても利用された洋館と、外国からの賓客に日本文化を伝えるために設計された和館があります。入館無料。
昭和十七年、利為侯が太平洋戦争で戦死した後、邸宅は中島飛行機製作所に渡り、戦後は米極東空軍司令官の官邸として連合国軍に接収されます。接収解除後は、国と東京都の分割所有となり、現在は目黒区立駒場公園として敷地と和館は目黒区が、洋館は東京都が管理しています。
洋館は、英国貴族の館を想起させるカントリー・ハウス風の建築デザインでまとめられています。1階はお客様をもてなすための空間にもなていて、大階段下にはマントルピースと作り付けのソファーを設えたイングルヌックと呼ばれる炉端の小スペースもあり、戦前の華族の暮らしぶりがイメージできるものになっています。
利為侯の長女、酒井美意子さんは、マナー、エチケットの評論家として活躍する一方で、『加賀百万石物語』など自身のルーツや華族の暮らしぶりを綴った読み物も刊行されました。
ちなみに、江戸時代、加賀前田家は本郷に上屋敷、駒込に中屋敷、板橋に下屋敷を有していました。明治維新後、上屋敷の大半は文部省用地(現東京大学本郷キャンパス)となり、一部が前田家の屋敷地として残りました。
大正十五年(1926)に、本郷の前田家屋敷地と駒場の東京帝国大学駒場農学校との土地交換により、前田家により駒場に本邸が新築されました。
さて、加賀前田家の戦前の歴史に触れたところで、加賀前田家五代綱紀の時代を描いた人気時代小説シリーズの新作『分断 百万石の留守居役(十二)』を楽しみたいと思います。
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