直木賞作家で、重厚な歴史小説や剣豪小説で活躍された作家の津本陽(つもとよう)さんが、5月26日に誤えん性肺炎のため死去されました。享年89歳。
津本さんは、和歌山県生まれで、東北大学を卒業。文芸同人誌「VIKING」で活動し、1978年、和歌山・太地の江戸時代の鯨取りを描いた『深重の海(じんじゅうのうみ)』で第79回直木賞を受賞されました。
幕末から明治に活躍した榊原鍵吉を描いた傑作短篇小説「明治兜割り」をはじめ、塚原卜伝、柳生兵庫助、東郷重位、千葉周作など、剣豪を取り上げた時代小説で人気を集めました。剣道三段、抜刀道五段で武道への造詣が深く、剣術の立合いシーンのリアリティーには定評があります。
織田信長を描いた『下天は夢か』はベストセラーとなり、豊臣秀吉、徳川家康、武田信玄、上杉謙信、前田利家、伊達政宗ら、戦国大名を描いた長編歴史小説で活躍されました。
歴史時代小説家がまた一人、世を去り残念です。
謹んで故人のご冥福をお祈りします。
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『深重の海』(集英社文庫)
『幕末維新傑作選 最後の武士道』(集英社文庫)(「明治兜割り」収録)
『下天は夢か 1』(集英社文庫)