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明治維新は「建武の新政」の二の舞になるところだった!?

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「絶体絶命」の明治維新歴史家の安藤優一郎さんの文庫書き下ろし、『「絶体絶命」の明治維新』がPHP文庫より刊行されました。

今年、平成三十年(2018)は、明治維新百五十年の節目に当たる年です。
本書は、前著の『「幕末維新」の不都合な真実』の続編として、薩摩藩・長州藩により樹立された明治政府が覆い隠してきた不都合な真実、歴史の教科書では記述されないもう一つの明治維新史に迫る歴史読み物です。

混迷を深めた幕末とは対照的に、明治維新後の日本は「富国強兵」「文明開化」で目覚ましい発展を遂げたとされるが、本当だろうか?
本書は、維新の立役者である西郷隆盛の動きに注目しながら、首都の大混乱、経済不況、繰り返される薩長の暗闘など、討幕直後から崩壊の危機に晒され続けた明治政府の“不都合な真実”を描き出す。
近代化の光に覆い隠された「本当の維新史」とは?

明治維新を達成した薩摩・長州藩は勝つべくして勝ち、幕末の混迷を招いた徳川方は負けるべくして負けたという「予定調和のストーリー」に対して、著者は疑問を投げかけて、維新後の明治政府の実態に目を向ける必要があるといいます。

明治政府は、薩摩・長州藩による政局の主導権争い、租税などの負担増により各地で起きた農民たちの一揆、急激な社会制度の変化などにより、戊辰戦争直後から瓦解の危機に絶えず晒されていたといいます。

最大の危機となる西南戦争に勝利するまで、政府は薄氷を踏む危険な政府運営を強いられていましたが、そうした実情が教科書で記されることはありません。明治維新の“不都合な真実”だったからです。

本書の構成は以下の通りです。

第一章 西郷隆盛も嘆いた「新政府の腐敗」――首都東京の混乱
第二章 「人材不足」に悩む薩摩・長州藩――旧幕臣の引き抜き
第三章 繰り返される「薩摩藩vs.長州藩」の暗闘――他藩の巻き返し
第四章 西郷隆盛率いる「留守政府」の大混乱――政府大分裂の兆し
第五章 薩摩・長州藩からの「反政府運動」――西南戦争と萩の乱
終章 「江戸ブーム」の到来と幕臣たち――東京開市三百年祭の開催

近代化の光の陰で覆い隠されてきた「明治政府の不都合な真実」が次々と明らかになっていき、「討幕を実現して天皇中心の国家を樹立した明治政府は、危うく建武の新政の二の舞を演じかねなかった。歴史が繰り返られるところだった」という著者の指摘も、奇を衒った大げさなものではないように思われました。

そして、こうした危機を乗り越えて政治基盤を固められたことこそが、本当の意味での明治政府の勝利なのでしょう。

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『「幕末維新」の不都合な真実』(安藤優一郎・PHP文庫)
『「絶体絶命」の明治維新』(安藤優一郎・PHP文庫)