誉田龍一(ほんだりゅういち)さんの文庫書き下ろし時代小説、『手習い所 純情控帳 泣き虫先生、棒手振りになる』が双葉文庫より刊行されました。
ちょっとしたことにすぐ感動して涙を見せることから、「泣き虫先生」と呼ばれる、手習い所の若師匠の三好小次郎が活躍する人情時代シリーズ第3作です。
手習い所「長楽堂」の先生ぶりも板についてきた三好小次郎。子どもたちからも「泣き虫先生」と呼ばれ、相変わらず慕われているが、そんなある日、小次郎はひとりの子どもの様子がおかしいのに気づく。心配になって家を訪ねてみると、棒手振りの父親が怪我をして働けなくなったという。その子のために、小次郎は父親に代わって、自ら棒手振りになって青物を売り歩くことにする……。
一話完結の連作形式で、今巻では、棒手振りになる話のほかに、手習い所で起きた小判紛失騒動や寺社奉行所をめぐる争いなど、小次郎の周囲で次々と事件が起こります。
とくに最後に収録された「小次郎、剣術試合に出場する」の章では、以前に所属していた藩の秘事に絡んで、小次郎が剣術試合に出場することになります。一刀流の免許皆伝と言われながら、剣を手に取ることがなかった小次郎の、剣の達人ぶりが初めて披露されます。ファンには楽しみな話です。
手習い所の子どもたちに加えて、貧乏寺の住職諾庵や南町奉行所同心の小山鉄五郎、動物と話ができるお蘭らとの掛け合いが楽しく、笑いあり、涙ありの人情時代シリーズは、ますます快調です。
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『手習い所 純情控帳 泣き虫先生、江戸にあらわる』(第1作)
『手習い所 純情控帳 泣き虫先生、幽霊を退治する』(第2作)
『手習い所 純情控帳 泣き虫先生、棒手振りになる』(第3作)