歴史小説家の杉本苑子さんが、老衰のため5月31日に死去されました。91歳でした。
杉本苑子さんは、1962年に『孤愁の岸』で第48回直木賞を受賞、1977年に『滝沢馬琴』で第12回吉川英治文学賞、1986年に『穢土荘厳』で第25回女流文学賞を受賞されています。また、2002年には文化勲章を受勲されています。
『孤愁の岸』は、江戸時代の宝暦治水事件を題材とし薩摩藩家老平田靱負を主人公とした歴史小説です。
『滝沢馬琴』は、「南総里見八犬伝」の作者とその家族を描いた作品。
『穢土荘厳』は、奈良時代の長屋王事件から大仏開眼までを、政争に明け暮れる皇室から庶民の暮しまでを重層的に描く歴史ロマン。
奈良・平安時代から江戸、明治まで、幅広い時代の人物たちにスポットを当てた、重厚感のある、良質な歴史小説を多く著作されてきました。
私にとって、時代を彩った人物の実像とその時代の空気を知るために、杉本さんの小説は格好の指針となるものでした。
絶版が少なくありませんが、Kindle版など電子書籍や古本で、あらためて読み直して、その魅力をこれからの時代小説ファンに薦めていきたいと思います。
謹んでご冥福をお祈りします。
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『孤愁の岸(上)』(講談社文庫)
『滝沢馬琴(上)』Kindle版(講談社文庫)
『穢土荘厳(上)』(文春文庫)