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知られざる朝鮮通信使の世界を描く、笑いのち涙の傑作

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千両絵図さわぎ植松三十里(うえまつみどり)さんの、『千両絵図さわぎ』が中公文庫より刊行されました。
江戸期に十二回来日した朝鮮通信使の受け入れをテーマにした、時代小説です。2013年7月に中央公論新社から刊行された『唐人さんがやってくる』を文庫化に際して改題したものです。

日本橋の版元・荒唐堂の三兄弟は、亡き父の悲願であった朝鮮通信使の行列の公認絵図の出版に向けて立ち上がる。
長男で二十五歳の利輔は書店を継いで、幕府の公認を得るために奔走する。二歳下の次男の市之丞は、貧乏旗本の家に養子に入り、林大学頭家の手代として、通信使を迎える仕事に追われていた。そして末の研三郎は十五歳ならが街をふらつくばかりだった。
そして次々と難題が降りかかってくる……。

朝鮮通信使とは、李氏朝鮮国王が日本に派遣した外交使節団。江戸時代、将軍の代替わりなど慶事の際に来日し、慶長十二年(1607)から文化八年(1811)まで十二回を数えました。

さて、物語は、荒唐堂の主人鈴木利左右衛門の通夜から始まります。
利左右衛門は、今の将軍(九代家重)に代替わりし、前回、朝鮮通信使が来日した十二年前に、幕府の公認を受けたいと懸命に働きかけ、役人には大量の袖の下をばらまいたにもかかわらず、あと一歩のところで、商売敵に持っていかれてしまい、大いに悔しがって、「次に唐人さんが来るときにゃ、何が何でも、うちが公認を頂いて、絵図を作るからなッ」と事あるごとに三兄弟に吹き込んでいました。

そんな父の仇を討つために奔走する長男・利輔に、公認と引き換えに、千両という高額の献金が求められます。また、短期間で絵を仕上げるために腕の良い絵師と職人の確保も必要、といったように、次々に難題が持ち上がってきます。

朝鮮通信使の行列絵図の公認出版権を得たり、町方の富商に献金を求める市之丞、器用なゆえに何をやっても長続きせずにやりたいことが見つからない三男坊・研三郎、それぞれに奔走(迷走)する三兄弟のドタバタぶりと活躍を描いた長編小説です。

これまで歴史に埋もれてあまり知られていない人物に光を当てた時代小説が多い著者が、今回は歴史上重要な出来事ながら、現代の日本人にはあまり知られていない朝鮮通信使の行列をテーマに選んでいます。
ページを繰りながら、江戸の人たちと同じように、朝鮮通信使を迎える気分が盛り上がっていきます。

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『千両絵図さわぎ』