福原俊彦さんの文庫書き下ろし時代小説、『露払い 仇討探索方控』が幻冬舎時代小説文庫より刊行されました。新しい時代小説シリーズのはじまりです。
浅草寺近くの小間物屋「三日月」の女主人お蘭は、仇討奉行大久保彦左衛門の支配下の「仇討探索方」の主人をつとめていた。剣術の達人である浪人の藤五郎と元忍びで番頭の陣内が、依頼主の仇を探し出し、目の前に引きずり出す仕事をしていた。
ある日、「三日月」に、陸奥国盛岡の大名、南部家に仕える藩士の娘、お春がやってきた。若武者姿をしたお春は、亡き父の仇討の手助けを依頼するが……。
仇討では、藩外においては藩士の力を借りて追うことができず、討ち手自ら諸国を回り、乏しい縁を辿って追いかけても、逃げた仇人に辿り着くことはなかなか難しいもの。
探索の中で生涯を終える者、諦めてしまう者も多いといいます。「探索方」があれば、仇討の苦労ももっと軽減されたかもしれないです。
物語の冒頭で、寛永十一年(1634)十一月に起きた、「鍵屋の辻」での仇討ちが描かれています。
「仇討探索方」が仇である河合又五郎の潜伏先を探し出し、鍵屋の辻が待ち伏せするのに適していると助言するという設定で、「探索方」の活躍の一端を紹介しています。
本書に登場する二千石の旗本・大久保彦左衛門忠教(ただたか)は、本作では(寛永十二年当時)、七十六歳ながら旗奉行をつとめる、矍鑠した姿で登場します。
己の生涯と徳川家の歴史を綴った書『三河物語』は何年も前に書き終え、写本が作られ多くの人に読まれていました。
『三河物語』をベースにして書かれた時代小説では、宮城谷昌光さんの『新三河物語』(上・中・下)がおすすめです。
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『露払い 仇討探索方控』