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西郷を救出せよ!元新撰組の剣鬼と稀代の銃豪に指令が

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明治剣狼伝 西郷暗殺指令新美健(にいみけん)さんの時代エンターテインメント小説、『明治剣狼伝 西郷暗殺指令』(角川春樹事務所・ハルキ文庫)を読みました。第七回角川春樹小説賞特別賞を受賞したデビュー作です。

物語は慶応四年(1868)七月、八町沖で繰り広げられた新政府軍と長岡藩による北越戦争から始まります。長岡藩で家老上席と軍事総督を兼任する河井継之助の勇壮たる姿が印象的です。

幕府が倒れ、明治新政府ができてから十年が経った。期待を裏切られた士族の不満は止まず、遂には西南戦争が勃発。警視隊の藤田五郎と砲兵工廠の村田経芳は、内務卿・大久保利通の命を受け、西郷隆盛を助ける救出隊への参加を命じられる。
だが、彼らの合流前に救出隊長の旧庄内藩士・竹内儀右衛門は暗殺されてしまう。陸軍卿の山県有朋らの思惑も絡む救出隊の真の目的は何なのか?

そして物語は明治十年に。佐賀、熊本、秋月、萩と士族らの反乱が続き、西南戦争に突入します。警視隊の小隊長を務める藤田五郎は、元新撰組の斎藤一として知られる人物。一方、村田経芳(むらたつねよし)陸軍少佐は、東京砲兵工廠で小銃の研究に没頭していました。剣豪と鉄砲狂いの二人をコンビとして組み合わせたところが本書の最大の魅力です。

とくに経芳は、薩摩藩出身で日本初の国産小銃〈村田銃〉を開発した、小銃研究の第一人者であり、射撃の名手でもあります。その銃士としての生涯は、東郷隆さんの時代小説『狙うて候』で余すところなく描かれています。

この二人のほかに、元新徴組の鈴木佐十郎と旧庄内藩出身で海運に携わる豪商の息子・広瀬孫四郎、北越戦争に参加後に渡米し帰国した歴戦の松藏老人、銃の扱いに手慣れた、奔放な山の娘・お森ら、ひと癖ある者たちが救出隊に加わっていて、スペクタクルな場面の連続で、最後まで一気読みできます。

物語には、狂言回し的な存在として、戯作者福地桜痴として知られる、東京日日新聞社長福地源一郎や、坂本龍馬の盟友で後の外務大臣陸奥宗光らも登場します。2018年のNHK大河ドラマ「西郷どん」の放送前に、明治の歴史を楽しむのも一興です。

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『明治剣狼伝 西郷暗殺指令』
『狙うて候』上